アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
16
-
「…また、遊ばれてる」
そう呟いたのは、水を司る精霊が水鏡で映してくれた、六人の男たちを見つめるティトルだった。
「…珍しいね、警備の人たちが森に来るなんて」
まあどうでもいいけど、とでも聞こえてきそうなくらい興味がなさげなティトル。水鏡からすぐに目をそらして、抱えていた本の続きに目を向けた。
「……。いつも物資を送ってくれる人たちかもしれないし、悪さをしないようなら、早めに帰してあげるんだよ」
本を読み始めても構ってほしそうにこちらを見つめている精霊たちに、ちらりと視線をやったティトルは、しばらく考えてからそれだけ言って、再び本の世界に引きこもった。
精霊たちは顔を見合わせて小さな肩をすくめると、森に入ってきた六人の男たちがいるところへ、ふわりと飛び立った。ティトルはその背中に目をやって、ふう、とため息をつく。
本当は一緒に遊んでほしいのだろうが、如何せんティトルは森の中に入ってきた人間に興味がない。精霊たちに遊ばれて迷っている様子を見ても、面白いとは思えなかった。
これまで精霊の森に入ってきた人間は、ほとんどがいたずらで入ってくる子供たちか、森を利用しようとする人間たちばかりだった。
いたずらな子供たちに関しては、ただのかくれんぼや鬼ごっこなら遊ぶだけ遊ばせた後、精霊たちがすぐに帰してやるのだが、草花をむしったり、そこで生きる虫や動物たちを戯れに殺してしまったりする子供もいる。
そうした子供たちや悪さをする人間は二度と森に寄り付かないように、ぎりぎりまで森をさまよわせてから帰す、というのが森を守る精霊たちの常だった。
そんなことを繰り返していたものだから、いつの間にか「迷いの森」と呼ばれ、ついにはほとんど人が寄り付かない森になってしまったのだ。
何年か前に警備隊の人間が来たこともあったが、隊長と思わしき男のあまりの迫力と執念深さに精霊たちが怯えてしまい、男が体力を使い果たすまでさまよわせてしまった。
ティトルがそのことに気が付いたのは本を読み終えたタイミングで、ふらふらしながら森をさまよう男たちを見たティトルは、すぐに森の入口まで帰してやるように精霊たちに指示を出した。
そうしたことを繰り返しているうちにその男たちも来なくなって、今回森に人間が入ってきたのは久しぶりだった。
精霊たちも久々の来訪者に、嬉々として森をさまよわせている。精霊の気質は、基本的にいたずらっ子なのだ。ティトルは精霊たちがやりすぎないように、本を読みながらも時折、人間たちの様子を水鏡で確認することにした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 26