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お互いに動けないまま見つめ合って数秒、その空間だけ時が止まってしまったかのように思えたが、先に口を開いたのは迷いの森を抜けてここにたどり着いた、レオンの方だった。
「…君は…」
「っ!」
深みのある低い声。レオンに話しかけられたことで、停止していたティトルの思考が動き出し、その場から動けもせずにびくりと肩を揺らす。
なぜ、どうしてここにたどり着いてしまったのか。どう接することが正解なのか、ティトルには全くわからなかった。混乱していた。
「驚かせてすまない。俺の名は、レオンギルド・エルヌス。怖いのなら、ここから一歩も君に近づかないと誓おう。ただ…そうだな、少しだけ、話をしてもいいか?」
「……」
レオンは言葉も出ないほど混乱している様子のティトルに、できる限り優しく話しかける。森の奥深く、今まで足を踏み入れたこともない場所で出会った人間は、木漏れ日に煌めく銀の髪に、潤んだ水色の瞳をもっていた。本当に同じ人間なのかさえ疑わしいほど、美しい人間だった。
―男なのか、女なのか?一人なのか、他にも人間がいて、ここで暮らしているのか?
訊きたいことが頭の中に次々と浮かんできたが、レオンははやる気持ちをなんとか落ち着かせて、水色の瞳を見つめながら、ゆっくりとその場に腰を下ろした。
ティトルはレオンの挙動の一つ一つをじっと目で追って、宣言通りこちらに近づこうとはしないレオンに、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
ティトルの、驚きと緊張で見開いていた目が元に戻り、上がっていた肩が下がったのを見て、落ち着いたことを確認したレオンは再び静かに話しかける。
「君は…君の名前を聞いてもいいか?」
「……、僕の名前なんて、知る必要ないでしょう」
形の整った唇から発せられたのは、澄んでいるけれども予想より低い声で、「僕」という一人称からも、ティトルが男性であることをレオンは察する。ティトルは初対面のレオンにまだ少し怯えながら、それでもレオンと関わる意思がないことを示すために、素っ気ない態度で冷たく突き放す。
「…必要がなくても、知りたいものなんだが…そうか。では…これは俺の予想だが、君は、この森の守り人か?」
レオンはティトルに拒絶されても気にした様子はなく、ただ少しだけ困ったように眉を下げた後、そう問いかける。ティトルは注意深くレオンを観察しながら、その問いかけには少し間をあけて、小さく頷く。
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