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瓢箪から駒⑦
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そんな感情に支配されてもがき苦しんでいた頃
「あおちゃん、桐楠大附を受験してみない?」
何も知らない母さんがそう言って来た。
二人が通う学校…。
ぼんやり考えていた俺に
「神崎君とお母さんが出会った学校なのよ。行かなくても良いから、受験だけでもしてみない?」
母さんの笑顔にぼんやりと思い出す。
父さんと母さんが出会い、思いを通わせた学び舎。
桐楠大附には伝説がある。
裏庭に咲く白い梅の花の花びらが散る瞬間を見た二人は必ず結ばれる…。
「何で梅の花?桜じゃないの?」
そう訊ねた俺に
「馬鹿ね。桜の花が散るのはみんな見えるでしょう?梅の花はひっそり咲いてひっそり散るの。それを見た二人だから結ばれるの」
笑いながら母さんが答えたっけ…。
「じゃあ、母さんと父さんは見たの?」
俺の質問に母さんは満面の笑顔を浮かべて
「もちろん!だから決心したの。私は神崎君の赤ちゃんを産みたいって。神崎君がこの世に生まれ、生きた証を残したいって…」
親父の話をする母さんは、まるで女子高生のようになる。瞳を輝かせ、頬を赤らめて親父を語る。
「だから、あおちゃんは私の大切な宝なの」
俺を抱き締める母さんの口癖。
俺は二人が出会った学校を見てみたい気持ちになり、受験だけしようと決めた。
桐楠大附は中途入学の枠が極めて少ないので、俺の凡人並みの頭では受かる筈が無いと思っていた。でも、受験を決めてからというもの、時間を見つけては蒼ちゃんが俺と章三の勉強を見てくれるようになった。
桐楠大附で常にトップの成績を取っている蒼ちゃんの授業は分かりやすくて、段々勉強が楽しくなって来たんだよな…。なんでも、興味を持って理解すると楽しくなるんだってこの時に知った。
父さんと母さんが出会い、愛し合った学校。
そして蒼ちゃんと秋月先輩が通う学校…。
二人はその学校で出会い、白い梅の花が散るのを一緒に眺めたのだろうか?
少しでもぼんやりすると考えてしまうので、忘れようと必死に勉強した。
自分の気持ちをかき消す為の勉強だった筈なのに、成績はぐんぐん伸びて行き、いつの間にか桐楠大附が合格圏内になっていた。
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