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雨降って地固まる⑦
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「えぇ!」
田中さんの言葉に、田中さん以外の全員が声を揃えて叫んだ。
「この家は私が使いやすいようにしております。ですので、最初は京子様が扱いづらいかと思いますので…」
にっこり微笑んだ田中さんに、蒼ちゃんが頬を膨らませて
「じゃあ、又しばらく一緒に居られないんだ…」
と呟くと、田中さんは小さく微笑んで
「週末には自宅に戻りますので、普段と変わりませんよ」
って答える。
「でも、7月末って言ったら夏休みだよ…」
「蒼介さん達は夏休みでも、私は仕事ですから…。お盆は、約束通り旅行へ行きましょう」
口を尖らせる蒼ちゃんに、田中さんが苦笑いをしてそう言った。
「なんか…すみません」
小さくなって俺が言うと、田中さんは苦笑したまま
「いえいえ。最後のお勤めですから…」
そう答えた。
「最後?」
驚いて言うと
「今まで、秋月家は私が管理していましたから。
京子様が嫁がれていらしたら、私のお役目は終了になりますからね」
と、笑顔で言われてホっとする。
「ですので、これが終わればもっと蒼介さんと時間が取れますよ」
唇を尖らせている蒼ちゃんに、田中さんが笑顔でそう告げた。
すると蒼ちゃんは満面の笑みを浮かべて
「そっか!うん、じゃあ我慢する」
と返事をしている。
なんだか…田中さんと居る蒼ちゃんは可愛いな~って思って見ていると
「あ!今度、神崎君もコウさんのお店に連れて行っても良いかな?」
と、先輩が田中さんに言い出した。
「え?」
すると、田中さんが露骨に嫌な顔をした。
「え!じゃあ、その日は僕も一緒に行くよ」
蒼ちゃんは田中さんの嫌そうな顔を無視して、先輩に手を挙げて嬉しそうに言っている。
田中さんは溜息を吐きながら
「何故、あなた方の間でコウが人気なのか疑問ですが…。別に私に許可を取らず、ご自由に行って下さい。」
と答える。
「コウさんって…美味しいコーヒー淹れてくれるんですよね?」
俺が田中さんに聞くと
「あいつはコーヒーにこだわってますからね…。
葵様までお店に行ったら…、あぁ…あいつが喜ぶ顔が目に浮かびます…」
大袈裟に田中さんは頭を抱えている。
母さんが再婚する事になり、俺は今まで出会えなかった人達との出会いが増えて行く。
結婚というのは、ただ本人同士が結ばれるのではなくて、こうして人と人が繋がって行くんだと実感したんだ。
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