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笑う門には福来る⑦
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「あおちゃん!起きなさ~い!」
部屋の外から、母さんの声が聞こえる。
俺は眠い目を擦ってベッドから起き上がる。
結婚式から一か月が経過した。
母さんと義父さんは結婚式と披露宴の後に1週間ばかりハネムーンに行ったけど、先輩は翌日から2週間剣道部の合宿だったり、夏休み中は田中さんはもちろん。蒼ちゃんや章三が毎日泊まりに来ていて、何だかんだと騒がしかった。
そして今日から新学期。
俺は眠たい目を擦りながら、キッチンで料理を作る母さんに
「おはよう~」
って声を掛ける。
「あおちゃんおはよう。早く顔を洗って、着替えて来て頂戴い」
そう言われて、俺は目を擦りながら洗面所へ向かうとドアを開けた。
すると浴室のドアも開き、全裸の先輩が浴室から現れた。
驚いて視線を向けると、全身ずぶ濡れの先輩と目が合う。俺と先輩…一瞬固まる。
俺…思わず視線を先輩の顔から下へ移し
「ぎゃ~~~!!!!!」
と叫んだ。
先輩もハッと我に返り
「ごめん!」
そう叫んで浴室へとターンする。
すると母さんが俺の悲鳴を聞いて
「あおちゃん、ごめ〜ん。翔君、シャワー浴びてるから気を付けてって言い忘れた」
と、呑気にキッチンから顔を出して叫んだ。
俺は洗面所のドアに背中を預けて、ズルズルと座り込む。
(し…心臓に悪い…)
浴室から出て来た先輩の身体は、引き締まって綺麗な身体をしていた。
ドキドキと鳴り響く心臓を押えて深呼吸する。
するとドアが開き、俺は後ろに倒れ込む。
「葵?何してんの?」
上半身裸で、下にパジャマのズボンをはいている先輩が俺を見下ろす。
髪の毛はまだ濡れていて、バスタオルを頭からかぶっている。
「あ…、気持ちを鎮めてました」
俺の言葉に、先輩が赤面する。
「あ…ごめん、これから出る時は気を付けるよ」
「あ…嫌、俺の方が気を付けます」
上半身が裸の先輩に、目のやり場が困りながら俯いて返事をする。
すると先輩が小さく笑う気配がする。
疑問に思って視線を上げると
「いつでも会えるって、なんか嬉しいね…」
って、恥ずかしそうに呟いた。
その言葉に「俺も!」って答えようとした時
「ゴホン!」
と、咳払いする声が聞こえた。
声の方を見ると、田中さんがニヤニヤしながら立っている。
「こんな所で、朝から何なさってるんですか?」
田中さんの言葉に、俺と先輩が赤面する。
「すみませんね、お邪魔して…。でも、そろそろ支度なさっていただけますか?」
にっこり微笑まれて、俺は顔が破裂するんじゃないかと思う程に熱くなった。
「すみません!急ぎます!」
俺は逃げるようにして自室へと飛び込む。
ドキドキと高鳴る心臓に、深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせる。
するとドアの向こう側で、階段の上る音がした後に先輩が部屋に入る音が聞こえた。
これから、ずっと毎日先輩と暮らしてく事になる。波乱万丈の予感しかしないけど、これからゆっくりと先輩と兄弟として…。
恋人として生きていくんだと実感した。
「あおちゃん、翔君。早くご飯食べて頂戴」
階段の下から母さんの声が聞こえる。
俺は急いで制服に着替えて、鞄を持って部屋を出た。すると同時に、先輩も制服に身を包んで部屋から飛び出して来た。
俺達は慌てていたので、激突しそうになって先輩に抱き留められる。
「ごめん、大丈夫?」
先輩に聞かれて
「はい」
と顔を上げると、先輩の唇が降りて来た。
『ちゅ』っと軽くキスをされ
「おはよう」
って笑顔で言われた。
(なんか…なんか新婚さんみたいだよね!)
そう思いながら
「お…おはようございます」
と、ドギマギしながら答えると、先輩が笑って俺を抱き締めた。
「そんな顔してると、もっと凄い事したくなっちゃうから…」
と、耳元で甘く囁いた。
俺は先輩から慌てて離れると、耳を押えて壁にへばりついた。
すると先輩は悪戯が成功した子供みたいにクスクス笑って
「ごめん、ごめん。冗談だよ。さ、早く降りよう」
そう言って先に階段を降り始めた。
俺が後ろ姿を見つめて
「兄さんの…意地悪」
って口を尖らせて呟くと、先輩は困った顔をして笑いながら
「参ったな…。俺、どこまで理性保てるか不安だよ」
って、小さく呟いた。
トントントンっと軽やかに階段を降りる先輩の後姿を見送りながら、俺は自分の心臓がいつまでもつのかが心配になった。
熱くなった顔を手で仰ぎながら、壁に額を当てる。
「朝から…刺激が強すぎるよ…」
ぽつりと呟くと
「あおちゃん!何してるの?ご飯食べる時間、無くなるわよ!」
母さんの声が聞こえる。
「は~い」
俺は返事をしながら、小走りで階段を駆け下りてリビングのドアを開けた。
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