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計画性のない奴
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「せっかくだから何か飲んでこうよ。」
(お前金ないだろ!)
ここで断るのもなんだけど、悟の財布がかなり心配だからここは俺のおごりか割り勘でいきたい。
「じゃあ、ちょっとだけ・・・。」
雑貨屋の隣にあるカフェに行くと、列に並びながらもメニュー表を確認する。
最低金額が350円のオレンジジュース、俺は余裕があるからどれでも選べるけど悟はそうでもないだろと様子を確認すればわかりやすく目が泳いでいる。
(お前、350円もないのか!?)
「決まった?」
「う、うん・・・あれにしようかな。」
そう言って悟が指さしたのはレジ前にある付け合わせの小さな100円のクッキーだった。
本気でいま財布にいくらあるのか聞きたい。
(こんな時いつもなら遠慮なく聞けるのに・・・。)
おごりのつもりで考えているならもっともっているだろうけど、いままでの経験からそんなことはないと予想はつく。
やっぱり俺がおごった方がいいはずだけど、なにか言い訳を考えなくちゃならない。
先に席を取っておいてもらうか、だけどもうメニュー見ちゃったし、普通並ぶのは男だ。
迷っちゃって決められないからとかでもいいけど、素直に行きそうもない。
どうするかと考えているうちに俺たちの番になってしまった。
「ご注文お伺いします。」
「えーと。」
「悟くん、実は私ここの割引券持ってるの。だから好きなの頼んでいいよ。」
これしか思いつかなかったから、そう言って笑えば悟じゃなくて店員さんが不思議そうな顔を浮かべた。
割引券なんてものが存在しないからだとわかっているけど、その視線を無視して悟の注文を待つ。
「え、いいの?じゃあこれを。」
「うん、わかった!じゃあ先に席取っといて!あたしちょっと、迷ってるから!」
「うん、わかった。」
無事に追い払うことに成功した俺はすごい戸惑った表情を浮かべている店員さんに向き直る。
「さっきのひとつとこれをひとつ、割引券なんてないから普通に払います。」
その言葉で理由を察してくれたのか、それともまあいいかと思ったのか店員さんはあっさりと切り替えてくれて俺はおごることに成功した。
伊達にあの単純バカの親友やっているわけじゃない。
「今日は楽しかったよ。」
「あたしも楽しかったよ。」
カフェに寄った後、家まで帰ってこられた安堵感とともにそう返す。
「また会えるかな?」
「・・・どうだろう?」
変なことになっちゃったけど、もうやるつもりはないから会うことはないんだけどはっきりと否定もしづらくてごまかした。
「そ・・・か、家遠いんだもんね。じゃあ住所教えて!手紙かくから!」
「て、手紙?」
「うん、だめならLINEでもメアドでもいいよ?」
手紙はだめだ送り先が存在しない、姉ちゃんのとこを教えたら更にややっこしいことになるし、スマホも一つしかもってないから教えられるのはメアドだけだ。
「メアドなら・・・。」
「やったー!」
サブアドレスとして使っているメアドを教えればすごい喜ばれた。
(お前、なんで一回あっただけでそんなぐいぐいこれるんだよ。)
「じゃあ、帝都によろしくね!またメールするね!」
「うん、また・・・。」
元気よく手を振るその姿を見送って俺は急いで家の中に入る。
「おかえり、デートどうだった?」
「疲れた。」
すぐさま出てきた姉ちゃんにそう返しながらも俺はソファーの上にバタンと倒れた。
こんな形で悟をだましたことに罪悪感を感じつつ、詳しく聞きたそうな姉ちゃんを無視してればスマホが振動した。
確認してみればそこには悟の名前があった。
【風邪大丈夫か?みやこちゃんいるならいるって言えよびっくりしただろ!?】
【大丈夫だ。いきなり来たんだよ。】
【楽しかったから許してやるけど、予想以上につかっちゃったから500円ぐらい貸してくれ。】
予想通りの内容とあまりにも率直すぎる内容に自然に笑いがこぼれる。
(ばーか。)
今日の話をされたら面倒だから明日休もうかなと一瞬頭をよぎったけど母さんが許してくれないだろうし、休んだら休んだでなにを言われるかわからない。
しかたないかと思いつつ、俺は洗面所に向かうことにした。
いつもの俺に戻るために・・・。
END
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