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土曜日の夕方。
いつものように、前髪を上げてセットし、カラースプレーで髪色を変え、メガネを外し、カラコンを入れ、泣きぼくろを左目尻の下に入れる。
ファッション誌から飛び出してきたような流行の服を纏い、冴川は、ゲイバーへと向かった。
ゲイの友達は何人かいるが、特定の人はいない。
自分を解放するために通っているようなものだ。
いつものように、いつもの場所でゲイ仲間と、お酒を呑んでいると、視線の向こうに見覚えのある顔が見えた。
加藤課長だ。
冴川は困惑した。
ここは、ゲイバーだ。
加藤課長は、何しに来たのだ?
課長がゲイ?
自分がゲイだとバレて、調査しに来たのか?
いろんなことが頭の中をめぐり、動揺が抑えられない。
いつのまにか、加藤を目で追っていたようで、加藤と目が合った。
冴川は、思わず視線をそらしてしまった。
「どうしよう。」
つぶやいたのもつかの間、加藤がこちらに向かってきた。
「一緒に、いいかな?」
「あ、うん、いいよ。」
普段は、加藤に対して敬語しか使わないから、ここで使う言葉で、加藤と話すことが、とても気恥ずかしい。
「こういうところ初めてなんだよね。けっこう混んでるし。」
気さくな話し方は、普段の加藤のままだ。
「土曜日だからね。みんな、この後が楽しみなんじゃない。」
冴川は、自分の声が震えていないか気になって、仕方なかった。
「あっ、そういうことか。」
まさか、課長とこんな話をする日が来るとは・・・。
冴川は、動揺を分厚い布でぐるぐる巻きにして覆い隠したい気持ちになった。
店内が薄暗いせいなのか、普段の自分と全く違う容姿だからなのか、加藤は冴川だと、全く気が付いていない。
加藤は、威圧感のない、優しい口調で話す。
そして、言葉を選んで、丁寧に話をしてくれるし、こちらの話を、ちゃんと聞いてくれる。
部下に慕われるわけだよなと、冴川は思っていた。
2人だけで1時間ほど、話をしただろうか。
会社でも、こんなに長い時間、話をしたことがないのに。
冴川は、お酒のせいもあるかもしれないが、気分が高揚していた。
「じゃあ、また。来週も来る?」
加藤に聞かれたので、毎週、土曜日来ているから、待ってるよと、期待感満載の返事をしてしまった。
「俺は、加藤信彦、よろしく。」
と、右手を出してきたので、冴川は、相澤龍之介です、よろしくと握手をして、その日は別れた。
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