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プロローグ2
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さて、どうしたものか。
転入生が来るのは明日の午前10時。別に予定は入ってはない、が……
俺も実は1年ほど前に他校から異動してきたんだが、その時に2番目の兄さんに言われたことを思い出した。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「へえ…祐介異動すんの。また変な時期だね。えっ????聖さんの学園に引き抜きされた……?たしか聖さんとこの学園って、全寮制の男子高だよね……しかも中学からのエスカレーター式……!!!!The 王道学園!!!!ってかんじの!!!!!!!!!!!!ktkr!!!!!!!だったら王道学園のこと知っといた方がいいと思うんだよね、ね!」
春休み中に実家に帰ったのがいけなかったんだ。2番目の兄さんは腐男子?というらしく、男同士のあれこれを聞くとテンションがドン引くくらい上がる。色んな意味でこわい。
そしてこの手の話をはじめると兄さんは止まらないのだ。この後俺は、小一時間ほど王道学園について語られたのだった。
思い出したくないが、兄の話によるとこの転入生はいわゆる"王道転校生"なるものだろう。関わるのはさけた方が身のためだな。
王道学園、というものの設定を聞いて俺が思ったことは1部の人物には関わらない方が良いということだ。
まずは王道転校生。途中で編入してくるが、最初は変装をしていて変装を解くととてつもない美形という。性格に難があり、話が通じず自分の正義を貫いて人の言うことを聞かないらしい。王道転校生のことを宇宙人と総称して呼ぶこともあるそうだ。
次に生徒会。会長は俺様、副会長は和風美人で敬語、会計はチャラ男、書記は無口ワンコ?が王道なのだそうだ。
最初に聞いた時は別段問題あるか?と思ったが(いや、キャラは濃いけどな)生徒会が王道転校生と組み合わさると最悪らしい。
詳しくはあまり覚えてないが、生徒会が王道転校生をいたく気に入り最終的に仕事をしなくなりリコールされる、という最悪の話。
絶対関わりたくねぇ!
と、思った俺はこの学園にきてからは生徒会には関わらないようにしてきた。
幸い、受け持ちは1年生のAクラスからCクラスだったため今まで会うこともなかった。そして大体そういう役職についている者は、この金持ち学校の中でもさらに上位の家柄の者が多い。
そんな金持ちがこんな外部から入ってきた教師に興味なんか持たないだろうと高をくくっていたんだが……
今年度から生徒会顧問にされました。
はい。もちろん聖さんです。殺意通り越して笑えたわ
さらに今年からクラスを持つことになった。それも何と1年Sクラス……
うちの学園はクラスが各学年S、A、B、C、Eクラスに分けられている。基本的には成績順。その中でも家柄の規模や普段の素行などで変動する。
例えばSクラスとなると、どの学年も世界規模の大手会社の跡取りなんかいる。クラスの人数はほかのクラスに比べ少数だけどな。
ある程度馬鹿でも家が金持ちなら入れるってことだ。
逆にEクラスは特に素行に問題がある生徒が集まっている。どんなに成績が良くとも問題を起こす生徒はEクラス行きになるわけだ。
大体は英才教育受けてる生徒がほとんどだからEに落ちるほど馬鹿な生徒は滅多に居ないが。
なんでよりにもよって転入生が俺のクラス……Sクラス担任ってだけで気が重かったのに…明後日教室行きたくねぇ
ひとまず明日どうするかだ。できるだけ関わりたくはないが、俺のクラスなら今後接触は増えていくはず。ただ明日会うとなると、校舎の案内なんかもする必要がある。
ちなみに今日は金曜だ。明日は土曜ではあるが、新入生歓迎会やら再試の準備なんかで教師連中や役職についてるものは今月いっぱいは土曜まで出勤なのである。
ほかの仕事は問題ないんだが、さっき言ったように長時間の接触は避けたい。
どうしたもんか
やっと職員室見えてきた。理事長室遠すぎなんだよ。つーか無駄に広すぎるんだここは
「失礼しました」
職員室のドアから誰か出てきた。制服だから生徒だな。
あの長い髪は…………
「よう、水無瀬」
「……加瀬澤先生」
こいつは水無瀬 真澄(みなせ ますみ)。うちの生徒会の副会長だ。藍錆色の長髪は腰上で真っ直ぐに切りそろえてあり、絹のように艶やかだ。名は体を表すというが、こいつの場合はそうである。たしか実家は茶道で有名だった気が……
1ヶ月ほど前に生徒会顧問になった時顔合わせしたんだが、その頃からあまりいい印象ではないようで会う度眉間にシワを寄せている。
「生徒会の仕事か。お疲れさん」
「…はい。なにかご用ですか」
すごい不機嫌だなおい
あ、そうだ
「そうそう、ちょうどいい所で会った。頼みたいことがあるんだが」
俺はいつもできるだけ愛想良く接してるんだがな。あ、さらに睨んでる。そうとう嫌われてないか、これ
「あまりいい予感はしませんが、なんでしょうか」
「明日編入生が入ってくるんだが、校門まで迎えに行ってもらえないか?」
「……それはわたしである必要はありますか?」
「まあ誰でもいいんだが。お前人当たりいいからな。相手が失礼な態度とらなけりゃ愛想いいし仕事丁寧だろ。だからだ」
まあ俺には例外だけどな。笑顔でも目がいつも笑ってねえし
「……わかりました。」
「よし。明日の10時によろしくな。詳しいことはまた詳細を渡すが、校舎の全体図渡して寮まで案内してやればいいから」
「はい」
褒めたっていうのにすげー不服そう……まあこいつが言いたいことはわかっている……
「……あと加瀬澤先生、いつも言ってますが服装どうにかしてください。学校の風紀が乱れます。いくら学校側がゆるいからといってその格好はどうかと思います」
そう。こいつが俺を嫌う理由は服装。ちなみに今日のコーデはワインレッドのシャツに黒のジャケット、パンツ。首や手首にはシルバーアクセが2連でぶら下がっており、両耳ともピヤスが複数あいている。しまいには金髪で襟足が長め。まあいわゆるホストのような風貌。
「俺に似合ってるだろ、生徒に評判が悪い訳でもない」
「そういうことではないんです。仮にも教職員とあろうものが……シャツの前も開けすぎです。貴方はそんな格好しなくても十分……」
「へー十分?」
「ッ……!!!なんでもないです。とりあえず明日はわかりました。」
そういうと水無瀬は早足で行ってしまった。
なんだあいつ……ちょっとはかわいいとこあるじゃねーか。嫌われてるわけではないのかもな。今度からかってやろう
面倒事もとりあえず大丈夫そうだ。あとは土日明けだな。なにも問題がないといいんだが。
俺は頭を抱えながら残った仕事をするべく職員室に戻るのだった。
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