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エピローグ
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そこからはなし崩しのように、関係に溺れていった。『都合の良い関係』のまま豹牙に抱かれ続ける。
『今夜は無理』
そう言われたけど、顔を見たくて豹牙のマンションに行った。借りていたDVDを返すという言い訳を用意して。
入口で黒髪になっている豹牙にばったり会った。
「豹牙! 髪、一体どうしたんだよ!」
驚いた……黒髪も格好良いけど。
「イメチェンしたくて」
珍しく柔らかい口調。
「DVDありがとう」
『来るな』って言われていたし、今日は大人しく……
帰ろうとしたら、手首を掴まれた。
「上がっていきなよ」
「いいのか?」
若干の違和感を感じつつ、エレベーターに乗り込む。
扉が閉まったら、急に手を握られた。
「な、何?」
今まで外で触られた事ないし、慌ててしまう。
「駄目?」
「……駄目じゃねぇけど」
なんか今日の豹牙は変だ。
緊張しながら部屋に入ると、ソファに押し倒された。
「こ、ここでヤるのかよ。最近、寝室じゃないと絶対にヤんなかったくせに」
「…………それは多分、君の事を見せたくなかったんじゃないかな」
「え……? どういう事?」
考える間もなくキスされた。
触り方が違う。
キスの仕方が違う。
タバコの味もしない……!
「あんた、誰!?」
慌てて押しのける。
「キスで気付かれるなんて……俺は響牙(きょうが)。豹牙の双子の兄」
くすくす笑いながら、その人が答える。
双子だったんだ……
一卵性ってやつか。瓜二つ。
「仕事の都合で、しばらく厄介になっていて……付き合っている子がいるなら遠慮したのに」
もしかして、そのせいで夜、追い出された?
兄弟には見られたくなくて……?
都合よく考えてしまう。
「あ、いや。俺は……」
「豹牙に恋人ができるなんて意外だったよ。いつもセフレばっかりでさ。絶対に紹介してくれないんだよね。高校の時、付き合ってた子が俺を好きになっちゃってから」
「恋人じゃない。セフレです……」
言っていて落ち込む。
「そうなの? 珍しく自宅に連れ込んでたから。君、すっごく可愛いし」
「実は……」
響牙さんは聞き上手で、いらない事までペラペラ話してしまった。彼氏に浮気されてヤケでに抱かれているうちに好きになってしまった話まで。
「でも、自宅に入れる時点で気に入ってると思うよ」
「そうでしょうか……」
ガチャガチャと鍵の音。
豹牙が帰ってきた。
「――――試してみる? あいつの気持ち」
「え……?」
「俺とイチャついてヤキモチ妬かせてやれば?」
ヤキモチ? あんな飄々としている奴が?
「妬かないと思います」
全然、想像つかないし、スルーだったら俺の方がダメージが大きい。
「やってみようよ。君も現状変えたいんだろ?」
抱きしめられる。
「キスもしとく? 弟が怒っても『豹牙と間違えた』って言えばいいし」
顔を近づけられて戸惑ってしまう。
怒らないとは思うけど……
「でも、やっぱり……」
その時、ドアが開いた。
「この……! 節操なし!」
豹牙が響牙さんの肩を掴む。
「お前には言われたくない。可愛いね。この子」
響牙さんは含み笑いをしてから、俺の頭を撫でてから頬にキスをした。
「ふざけんな!」
思いっきり引き離される。
豹牙が大声を出すなんて珍しい。
ほ……本当に嫉妬……?
「セフレなんだってな。豹牙なんてやめて俺の恋人にならない? とりあえず今からデートしよう」
響牙さんが俺の手を握り、にっこりと言う。
豹牙に笑いかけられているみたいな錯覚に陥り、頬が熱くなる。
「何、赤くなってんだ。お前は男なら誰でもいいのか! つい、この前、彼氏と上手くいかなくて泣いてたくせに。響牙は駄目だ。そいつは俺より緩いぞ。常に10人はセフレがいるような最低男。誰でもいいなら俺でいいだろ!」
「え……?」
言われた言葉が全然入ってこない。
『俺でいい』ってどういう事……?
思いもよらない言葉に驚く。
「デートなんて駄目」
「……俺」
強い口調で言われ、動揺していると押し倒された。
「絶対に行かせない」
シャツの中に手が入ってきて、体が反応してしまう。
嘘だろ……
――――信じられない。
人前なのに抵抗するのも忘れて、豹牙を見つめた。
「おいおい。俺がいるのにリビングでヤるつもりか?」
お兄さんが呆れたように笑う。
「うるせぇ。出てけ」
そう言いながら、首元に付けられたキスマーク。
何箇所も付けられて、「こいつは俺のものだ」と言われる。
こんな……独占欲……
「行くなよ。司」
痛い位、抱きしめられる。
あの俺様男がそんな事を言うなんて……!
混乱しながら背中に手を回す。
響牙さんは笑いながらリビングを出ていき、玄関の閉まる音がした。
嘘から始まった俺達。
その中で何かが変っていたとしたら――
言葉にしたい。
…………この嘘を本物にする為に。
「豹牙……」
「司。お前が好きだ。俺と付き合って」
優しいキス。豹牙の言葉に涙が滲む。
感極まって言葉が出てこない。
「……返事は?」
ぶっきらぼうな言い方。でも、豹牙の頬が赤い。
涙を拭ってから、引き寄せてキスを返した。
「豹牙。俺も……」
(END)
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