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僕は一つの嘘をついた。それが彼を傷つけるとも知らずに――。
「やあ、奈美夜(ナミヤ)ちゃん、お待たせ! 今日も着物姿可愛いね!」
「あらやだ、聖様! そんなじろじろ見ないでくださいな恥ずかしい!」
「ごめんごめん、だって君があまりにも綺麗だったからつい――」
「せっ、聖様……」
二人はラブラブに見つめあうと、道端でキスするような雰囲気を漂わせた。急に人の視線が気になると二人はキスするのをやめて仲良く腕を組んでデートを楽しんだ。
「ナミヤちゃん、今日はどこ行きたい?」
「聖様が行く所でしたら、何処へでもお供しますわ。ウフフッ」
「そうか、じゃあ。二人で映画館に行こうか?」
「ええ、いいですわ。わたくし、映画は大好きですの」
「そうか。じゃあ、今から行こう!」
聖矢はそう言うと彼女(?)の手を繋いで二人して映画館へと向かった。そして、楽しい一時はあっという間に過ぎた。それはまるで魔法のような幸せな時間だった。沢山はしゃいだ後、いつの間にか夕暮れ時を過ぎて夜へと景色が変わった。
「今日は楽しかったね、奈美夜ちゃん。次はいつ会えるかな。俺は最近はずっと、君のことを考えているんだ――」
「まぁ……!」
「君に出会ったあの日、俺は稲妻が落ちたようなときめきを感じた! いや、正確には電流のようなビリビリとした胸のときめきを感じたんだ! この世界に、黒髪で着物姿が似合う女性がいたんなんて、外国育ちの俺には凄い衝撃だったよ! ああ、奈美夜ちゃん俺の至高の最上級天使……!」
「ああ、せっ、聖様…――!」
聖矢は愛しさを抑えられなくなると、大胆に彼女(?)を抱き締めた。
「だっ、だめですわ聖様、こんな所で抱き締められたら私恥ずかしい……!」
「ああ、我慢できない! 君が愛しい……! どうにかなりそうだ! もうキスや抱き締めるだけじゃ我慢できない!」
「そっ、そんな聖様……! ああっ、だっ、だめ……!」
いきなり彼は野獣と化すと、そのまま彼女(?)の着物の裾を捲って太ももを撫でようとした。するとその瞬間、首もとに突如、バチバチと電流が走った。
『グォアアアアアアアアアアアアッツ!!』
その瞬間、聖矢は悲鳴を上げると地面にバタリと前のめりで倒れた。いや、正確には気絶した。
「よくやった廿浦(つづうら)。もう、下がってよいぞ」
「はっ、御意。」
サングラス姿に黒いスーツを着たポニーテールの男性は、主君である奈美夜の命令に一言返事をすると、執事のようにキリッとお辞儀して一歩下がった。彼は闇の中に紛れながら突如姿を現すと、聖矢の首もとにスタンガンを押し当てて気絶させたのだった。
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