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戸惑う感情⑫
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翌朝、目が覚めると元気になっていた。
「おはようございます」
田中さんは僕の額に手を当てると
「熱は下がりましたね」
そう言って、安心した笑顔を浮かべた。
でも、僕は少しだけ残念な気持ちになる。
昨日、田中さんはずっと傍に居てくれて、夜、僕の我儘に付き合って添い寝してくれた。
だから2日目の朝も、僕は田中さんの腕の中で目が覚めた。
僕の熱が無いのを確認すると、田中さんは布団から出てフロントに連絡している。
僕は田中さんが居なくなった布団の中で、2日間の余韻に浸る。
もう、終わりなんだな〜って思って寂しくなってしまう。暗くなる気持ちを、首を振って切り替える。その時、枕元にある解熱剤と書いた袋を見つける。
「ん?」
僕が飲んだ記憶ない薬の袋に手を伸ばし、中身を見て固まる。
フロントへの電話を終えた田中さんに
「田中さん…」
「はい?」
「これ……」
と、薬の袋を持って呟くと、田中さんは「あ…」って顔をして
「5時間毎でしたので…」
って、にっこり微笑まれた。
「いつ…入れたんですか…」
真っ赤になって聞くと
「寝ている時に…。起きていらしたら、絶対に嫌がると思いまして…」
そう言われて、僕は布団を頭から被る。
「酷い!嫌に決まってるじゃないですか!」
叫ぶ僕に
「起きていても、ご自身では無理でしたよ」
そう言われて、僕は布団の中で恥ずかしさに丸まる。
そう、枕元に置かれた薬は座薬だった。
自分で入れた記憶が無いとしたら、田中さんに入れて貰った事になる。
「大丈夫ですよ。翔さん時もやりましたから、慣れています」
って言われて、布団から目だけ出して
「それ…いつの話?」
と聞くと
「翔さんが小学生…」
の言葉の途中で
「僕を幾つだと思ってるんですか!」
そう叫んだ。
もう…穴があったら入りたい。
「すみません。赤地さん、そんなに怒らないで下さい」
困ったような田中さんの声。
布団を被って丸まる僕の身体を、田中さんがそっと抱き締める。
「今日、朝食を川床にして貰いましたから、一緒に食べに行きましょう?」
そう言って、田中さんが布団越しに僕の背中をそっとトントンする。
昨夜、何度か起きる度、眠るまで田中さんは僕の背中を軽くトントンと叩いてくれていた。
それが心地好くて、僕は田中さんの身体にしがみついて眠りに着いた。
「赤地さん?…嫌われちゃいましたね…」
って寂しそうに言われて、思わず
「そっ…!」
そんな事ないって言おうと、布団から飛び起きると、ガシっと腰を掴まれて布団から引きずり出されて
「赤地さん、食事に行きましょう」
って、微笑まれた。
(やられた……!)
真っ赤な顔で田中さんを見ると
「そんな可愛い顔をして、襲われたいんですか?」
腰を掴まれた状態から、布団に押し倒される。
田中さんの身体が覆いかぶさり、誘うような瞳が近付いて来た。
(どうしよう……)
頭がパニックになり、僕は田中さんの背中に手を回してギュッと目を閉じた。
すると「プッ」と吹き出され、鼻を摘まれる。
驚いて目を開けると、田中さんは身体を起こして僕の身体を優しく抱き起こす。
「あなたは、警戒心があるんだか無いんだか…。心配になりますね」
そう言われて、頭を撫でられた。
そして僕の浴衣を昨日みたいに綺麗に整えて上着を着せると、田中さんも浴衣を直して上着を羽織る。
「さぁ、今度こそ、川床で食事をしましょう」
そう言われて、僕の前を歩き始めた。
部屋を出て長い廊下を抜けると、地下へと続く階段がある。
その階段を降りると、板張りの広間が広がっていた。
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