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待ち合わせ
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翌日。待ち合わせ時間の迫る夜、ぼくは尋常じゃなく緊張していた。
新条さんと二人きりで会うという状況だけで緊張するところが、今はまた別の意味で、ネットで調べたSM知識が頭の中をぐるぐると旋回していて、ぼくを脅していた。
電車のなかでも足が震えているような感覚があった。
どうしよう。
やっぱり、無理かもしれない。
すっかり弱気になったぼくは、待ち合わせの駅に到着したのにも関わらず、降りずに、電車のなかに立ち尽くしていた。
(……今日は、急用ができて……ごめんなさい……ちょっと用事が……)
ドタキャンの言い訳が頭の中に浮かんでいく。ぐるぐると悩んでいるうちに、握りしめていた携帯がメールの受信を知らせた。
『私はもう着いてるよ。大丈夫? 迷ったりしてない?』
メールは新条さんからだ。
時計を見れば、約束の時間を過ぎている。ぼくは一人で待つ新条さんの姿を思い浮かべて、深く息をついた。
……結局、ぼくは、電車を乗り換えて、待ち合わせ場所に走っていた。
「すみません。お待たせしてしまって」
息を切らし、まともに顔も見れず頭を下げるぼくに
「メールの返事もないから。心配したよ、どうしたの?」
と、新条さんのちょっとだけ困ったような穏やかな声がふりそそぐ。
ぼくは、新条さんの、この声も好きなんだ。
でも、ちゃんと言わないと。
ちゃんと、無理だって。
「……あの、うっかり、乗り過ごしてしまって」
喉まで出かかった言葉は言い訳にすり替わっていた。
そっと顔を上げて、新条さんの反応を見る。
新条さんは、怒っているわけでもなく、ぼくの首を締めた時と同じ平然とした表情で、
「そう。それは、お仕置きが必要だね」
と、ぼくに告げた。
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