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〜傑side〜
「今度こそ死ぬかと思った。」
「初産のときもそれ言ってたー!」
病院のベッドでげっそりとしている傑に、明希がそう言いながらケラケラ笑う。
「まじで笑い事じゃねえからな?!出産がどうのじゃねえ、年齢考えろあの性欲大魔神が。」
「でも、恋だって3年前に産んでるよ?」
「おい明希、お前ならわかるだろ。アラフォーにとって、3年がいかに大事か!」
「あは、そうね。」
他人事だと思って、明希はずっとくすくす笑っている。
まあ、明希は明希で、別の苦労をしているのだけど。
ただそれはそれ、これはこれだ。
「傑ー、連れて来たよ!」
ニコニコしながら入ってきたのは楓だ。
そしてその後ろには。
「おーおー、烏沢夫人のお出まし?」
「もうっ、そういうのだめだから!」
「えー?でも傑間違ってないよ?」
楓に言われて、照れて真っ赤になる千秋。
千秋は、昔からちっとも変わっていない。
本当に、年をとった気がしないのだ。
帰国した紘が、大々的に千秋を婚約者として発表し、2人は満を持して結婚。
メディアから大注目の烏沢紘が選んだ結婚相手となれば、当然千秋も大注目。
けれど千秋はやっぱり千秋で。
ひとつひとつの取材に丁寧に対応しすぎて、記者からの株が爆上がり。
社長夫人というと、やはり強気だったり、癖が強かったりするのだが、千秋はあくまで紘をたてて、自分は1歩引く。まさに大和撫子。
テレビ露出こそ少ないものの、日本で名前を知らない人の方が少ないと思う。
千秋のすごい所は、恨みがあるはずの俊蔵にも会いに行っていること。
紘は止めたそうだが、千秋が譲らなかったという。
「傑は、表向きは夫人じゃないからなぁ。」
残念そうに言う明希。
一体何度この話をしたことか。
「おーおー、俺が夫だ。」
「それは違うでしょ?」
くすくす笑って指摘してくるのは楓だ。
「圭吾さんは婿養子だもんね。」
傑は、笹倉グループの社長になった。
それを考慮して、圭吾が婿養子に来る、という話になった。
成宮家にももちろん挨拶に行ったが、成宮家は、圭吾のことは放任、という感じだった。
その上、相手は笹倉グループ。
執事一家の成宮家が、反論する気などなかったのだろう。
定期的に成宮家にも顔を出しているが、あまりいい顔はされない。
それは結婚して10年以上経った今でもだ。
ちなみに、傑と圭吾はいわゆるできちゃった結婚である。
圭吾が傑の父、充から1発殴られたのは、致し方ない。
傑たちは、39歳になった。
それぞれ、20代とは全く違ったことをやっている。
傑は副社長から社長になり、それに伴って圭吾も社長秘書になった。
子供は全部で4人。今回産まれたのが4人目だ。
千秋は社長夫人である前に、孤児院の院長だ。
『まつみや院』という孤児院を紘の経営の元、運営している。
紘は、孤児院、探偵事務所、その他諸々の経営のために会社をもう一度立ち上げた。
昔の烏沢グループの社員たちは、皆紘に信頼を寄せており、戻ったらしい。
やりたいことがあるのに、やる力がない、お金が足りない、そんな人達の支援を主にしているのが、現在の烏沢グループである。
千秋には、薬が定着せず、紘との子は望めなかった。
色々と迷いはあったようだが、まつみや院から子供を引き取った。
楓は、まつみや院で働く傍ら、洸大のバーを手伝っている。
相変わらずカフェとバーを運営している洸大は、昔よりも楓溺愛、という感じだ。
この2人には娘が1人いる。中々の強者だ。
それから、明希と翔也。
明希は翻訳の仕事を家でやりながら、翔也のサポートや、たまにUHの業務のサポートもしているらしい。
UHの社長には、明利が退いた後、利希がついた。
明希は、3度流産した。
器官は出来たものの、人より不安定な状態だったようだ。
この件で、明希は相当落ち込んだし、苦労もした。
でも、翔也の支えがあって、明希は今も明るく生きている。
2人も、悩んだ末に養子を取った。
ただ、翔也が有名人のため、子供が養子であることは、公表していないし、知っているのも傑たちだけだ。
真司と小雪は、2人でドイツ生活中。
真司のバイオリンの関係だ。
娘を1人、日本に置いているのでたまに帰ってくるが、特別2人が変わった様子は見られない。
いや、強くなったか。
零と遥は相変わらず医者と検事。
遥はまだバリバリに裁判に出ている。
薫と、もう1人子供が生まれて、遥は2人を見事に育てあげている。
赤津家は
「傑ー?大丈夫ー?」
「あ?あー、ちょっと考え事。」
覗き込んでくる明希に、そう言う。
(……あそこはまあ、いろいろあってもぶれねえよな。)
傑はそう考えをまとめ、明希たちとの会話に戻った。
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