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〜空夜side〜
「はよ。」
登校中、声をかけてきたのは笹倉新(ささくらあらた)。
笹倉家長男で、空夜と陸玖と同い年だ。
「おはよう。」
「おはよー!」
「陸玖うっせぇ。」
「ええ?!元気って言ってよ。」
今日は空夜たちが通う、私立茅野学園(かやのがくえん)高等学校の入学式だ。
空夜たちは2年生だが、全員出席しなければならない。
「つーか通学路で昴流見た?」
新が言っているのは、木之本昴流(きのもとすばる)のこと。
やはり茅野学園に通う高校2年生。
琉と仲のいい翔也の家の息子だ。
「見てないよ。」
「はー、あいつ大丈夫なんかな。」
2年生になって、空夜と昴流がB組、陸玖と新がA組になった。
昴流は、1年生の後半から、生徒会長になった。
茅野学園の生徒会は、生徒票、教員票によって決定する。
昴流はほぼ全校の生徒票を獲得し、会長になった。
教員票は1票でも入れば生徒会に入れる。
だが、昴流自身はあまり会長職をやりたいわけではなさそうで、与えられた書類仕事や、企画は真面目にやるのだが、全校生徒の前の挨拶などは、どうも適当にやる所がある。
そして今日の入学式では、生徒会長からの挨拶があるわけで、新はそれを心配しているのだ。
「昴流といえば、髪はどうなんのかな。」
陸玖がそう呟く。
昴流は、中学1年生から、毎年髪色が変わっている。
元々は親似の黒髪で、中2は茶髪、中3は金髪、高1は銀髪だった。
「さぁな……原色しか残ってねえぞ。」
「金も銀もやったもんなぁ、あいつ。」
そんな話をしている間に学校に着いた。
とりあえず自クラスに行く2人とは別に、空夜は音楽室に向かった。
空夜は吹奏楽部。
入学式の入退場曲の演奏をやることになっている。
「くーちゃんおはよっ!」
「おはよう。」
空夜に話しかけてきたのは、同じ吹奏楽部の野田航(のだわたる)だ。
空夜はトランペットパート、航はクラリネットパートで、部活での関わりはたくさんはないけれど、昨年同じクラスだったため仲がいい。
今年は陸玖と同じクラスのA組らしい。
「1年生どんなかなー?可愛い子いるかな?」
「さあ?」
「もー、くーちゃん冷たい。」
チャラチャラした雰囲気の航だが、根は真面目で恋愛なんかには一途だ。
誰にでもなにかしらあだ名をつけ、誰とでも仲良くなってしまう、コミュニケーション能力の高い男でもある。
「おーいそろそろ移動するぞー!」
体育館で音出ししていいことになっているため、楽器を組み立てて移動する。
体育館では放送部がマイクや放送機器の準備を進めていた。生徒会も集まっているが、昴流の姿はない。
(昴流、どこにいるんだろ……)
学校にはいるはず。
どこかでギリギリまで時間を潰すつもりなのだろうか。
心配だが、今は演奏前。音出しに集中する。
しばらくして、吹奏楽部の学生指揮者が空夜たちの前に立つ。
2、3年生も揃っており、いよいよ入学式だ。
スゥ、と息を吸うと本番に向かう気持ちになる。
1年生の入場が終わり、副校長が司会の位置にたつ。
校長の挨拶や、来賓の紹介、1年生の呼名などを順調に済ませていく。時間もおしていないし、いい感じだ。
「続きまして、新入生の皆様に、在校生代表よりご挨拶させていただきます。」
ここまできてハッとする。
そういえば、昴流は来ただろうか。
「在校生代表、生徒会長、木之本昴流。」
シン、と静まり返る体育館。
「木之本昴流。」
本来、はい、と昴流の返事が聞こえ、登壇して、お決まりの祝辞なんかを述べたりするのだが。
「きーのーもーとぉぉぉぉ!!!!」
体育館には副校長の怒鳴り声が響き渡った。
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