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〜空夜side〜
「古文は事前に予習してきてもらって、そこを授業で解説していく。語句は配布してある語句辞書つかって調べてくれ。それを元に、1年生の時に習った技法も使いながら、自分で現代語訳してくること。ノートの書き方については今からプリント配るぞー。」
緋村は昨年も担任団の中にいて、現代文の授業は受けたことがあった。緋村の授業はわかりやすく面白いので、生徒からも人気がある。
古典は初めてだが、吹奏楽部の先輩からも緋村の古典は好評で、空夜は楽しみだった。
「何かわからないことがあれば、その都度質問してくれ。現代語訳は授業中に聞くぞー。間違えても構わないが、たゃんとやってくること。それから授業の最初に、簡単なテストを行う。漢文の方はどうしても時間が足りないから、そのテストで補っていくぞ。やったテストは次の授業の最初に解説する。それから予習してきた古文を読む流れだ。ここまでいいか?」
クラス全員を見回して、大丈夫そうだな、と緋村は頷いた。
「じゃあ最初は教科書6ページ、短い文章だから、これ丸々全部予習してきてくれ。次回の授業、水曜の……3限だな。その時間にやるからなー。」
指定されたページに付箋を貼って、帰ってからやろうと決める。
「さて、それじゃ自己紹介行くかー。約束通り俺からな。まあみんな知ってると思うが、名前は緋村優樹だ。年齢は50。既婚、子どもは2人。担当は国語だ。犬を飼ってる。今の犬は2匹目なんだが、もう可愛くてな……この話をすると長くなるからやめよう。好きな食べ物はビーフシチュー、嫌いな食べ物はとうもろこし。教師歴は長いが、もうおじいさんに片足突っ込んでるからな。なんかあったら遠慮なく言ってくれ。これから2年間、よろしく頼む。」
この学校の2年生と3年生の間にはクラス替えがない。
担任も持ち上がりになるため、緋村と、このクラスメイトとは卒業まで共にすごしていくことになる。
「それじゃ、名前順で行くかー?」
「えー!また私から?!」
「そう言えば去年も青原は1番だったな。」
昨年も緋村のクラスだった青原優子(あおはらゆうこ)。
空夜は彼女のおかげで2番になっているのだが、昨年は1番だったため、名前順でなにかする、なんてときの1番の憂鬱さはわかる。
「まあ、今回は前から行こう。今度は後ろからとか、適当な番号からとか回そうな。」
「はぁい。」
しぶしぶ立ち上がった優子が自己紹介を始める。
「青原優子でーす。去年は緋村先生のクラスのG組でした。ダンス部です。恋人募集中でーす。緋村先生は奥さん溺愛すぎて、プライベートの話すると絶対奥さんのこと話すので気をつけてくださーい。」
「おいこら。」
クラスがどっと湧く。
「好きな食べ物はじゃがバター、嫌いな食べ物はきのこです。えー、あと先生何言ってたっけ?」
「最後にクラスに一言。」
「2年間、よろしくお願いしまーす!」
ぱちぱちと拍手があって、優子が着席する。
それと入れ替えで空夜は立った。
「赤津空夜です。去年のクラスはA組でした。えーっと、なんだっけ……あ、吹奏楽部でトランペットやってます。双子の兄が隣のクラスにいます。毎年聞かれるので先に言うんですけど、赤津琉の息子です。」
えーっ!とかきゃーっ、とか声が上がるのを見ると、このクラスにもファンはいるようだ。
(お父さんって、俳優としての人気はすごいよなぁ。プライベート見たらみんながっかりするんじゃ……)
「好きな食べ物はかぼちゃの天ぷら、嫌いな食べ物は特にないです。2年間仲良くしてください。」
ぺこっ、と頭を下げて座る。
どうも自己紹介というのは緊張する。
空夜は前に立つことは嫌いではないし、むしろ好きなのだが、自己紹介は苦手かもしれないなと思った。
円滑に進む自己紹介。
ところどころ笑いも起きながら進んで、次は昴流の番だった。
「あー、木之本昴流です。部活はフィギア。一応生徒会長です。……いや知ってるよな。あー、空夜の父親と仲良い俳優の、木之本翔也の息子。だけど、まあそんな、似てないから期待しないで。去年も緋村先生のクラスでした。あとなんかいうことある……?好きな食い物?いちごタルトが好き。嫌いなもんはコーヒー。以上かな。よろしく。」
この学校には有名人の子どももかなり通っている。
空夜たち以外にもだ。
もちろん有名人の息子といえばクラスは盛り上がるが、色目で見られることは無い。
昴流にとっては、中学より居心地がいいだろう。
中学のとき、同級生の女子からかなりアプローチを受けていて、その理由のほとんどが有名俳優の息子だから、だった。
陸玖や新もそうだったけれど、親のことばかり出されるといい気はしないだろう。
まして昴流は養子だ。
空夜たちは幼い頃から交流があるから知っているが、世間には知らせていない。
今の自己紹介でも、みんなが昴流は母親に似ているのだろうと思っただろう。
明希は名前こそ知られているが、顔はあまり有名でない。
担任の緋村は知っているかもしれないが、昴流は緋村には信用をおいているようだったし、何かあった時は庇ってくれそうだ。
(なにも問題ないといいけど……)
中学のときのようにならないことを空夜は願った。
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