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〜空夜side〜
「はー、終わったぁー!」
楽器梱包から搬出までを終え、ほっと一息つく。
明日も部活があるので、学校での片付けは明日皆でやることになっていて、今日はパーカッションパートだけが1度学校に戻り、学校への搬入を行うことになっている。
空夜たちは自分たちの楽器を持って帰るだけだ。
「打ち上げいくのにくーちゃん楽器どうする?」
「んー、まあ持っていくよ。」
「え、B組は今日打ち上げなん?」
今日は土曜日のため、月曜が振替休日になっていて、大体のクラスはその日に打ち上げを行う。
もちろんB組も、クラス全体での打ち上げはその日だ。
「いや、仲良いメンツだけ。」
「えー!いいなー!俺も光樹とくーちゃんと打ち上げしたい!」
「向こう先約だからだめー。」
「光樹のけちぃー!」
2人のやり取りを見ながら空夜はくすくす笑う。
「明日も会うんだからいいじゃん。」
「まあ確かにそうだけどさぁ。」
空夜の方をじーっと見てくる航は不満そうだ。
ふと、ポケットに入れていたスマホが震えて取り出してみると、恋からの着信だった。
「もしもしお母さん?」
『もしもし?今LINE見たよ。ご飯いらないってことだよね?』
「あ、うん。もしかしてもう作っちゃった?」
『ううん、今日は陸玖と空夜いらないってなるかもしれないと思って、もしうちで食べるなら出前取ろうと思ってたから。気にしなくていいよ。』
「ほんと?ありがと。」
『空夜、楽器あるでしょ?』
「え?うん。」
『お母さんまだホールの外にいるから、今くれたら持って帰ってあげるよ。』
「え?!わざわざいいよ!重たいし!」
『でもお店にお邪魔するんでしょ?楽器場所取らない?翔也さんが車で送ってくれるって言うから、お母さん持って帰るよ。』
「ほんと……?ごめんね、ありがとう。じゃあ今から持っていくね。」
『うん、待ってるね。あと、お金あるの?大丈夫?渡そうか。』
「あ、今日お小遣い入れてきてないから、後で返すから今借りていい?」
『いいよいいよ、あげる。合唱コン頑張ったご褒美ね。』
「何から何までありがとう。」
『いいえ。それじゃ、ホールのすぐ外にいるからね。』
「うん、わかった。」
電話を切って、光樹と航に一言言って、1度外に出る。
恋に楽器をお願いし、翔也にも一言礼を言ってホールに戻った。
その後すぐ吹奏楽部のミーティングがあり、部活も解散になる。
楽屋の荷物などを片付け、空夜と航はゴミの回収と最終点検を行うことになった。
そのため光樹に先に行ってもらい、昴流たちにもう少しかかりそうだと伝えてもらうことにした。
「……よし、全部片付いたよね。」
「うん、まだ17時45分!完璧じゃね?」
「でも15分もかかっちゃった。」
「ちょっと楽屋数多かったもんなー。くーちゃん皆のこと待たせてるんだよな?俺ゴミ捨てとくから行ってもいいよ。」
「いやいや!ちゃんとやるよ。」
2人でホール指定のゴミ捨て場に袋を持っていく。
生徒たちは既に解散していてホールは静かだ。恐らく皆も外で待っているのだろう。
「……くーちゃん。」
「ん?」
「俺、ちょっと大事な話、したいんだけど。」
「どうしたの?」
手を洗ってから戻った荷物のある場所で、ふと足を止めた航に真剣に声をかけられて振り返る。
「……航?」
「くーちゃんとさ、部活で知り合って、1年経つけど……」
「う、うん?」
急にどうしたんだろうと思う。
何か悩みごとでもあるのか、部活での心配ごとか、空夜も真剣に向き合う覚悟で、次の言葉を待った。
「ずっと、前から思ってて、でも合唱コンの練習してて、もう、黙ってられないっていうか……」
(も、もしかして俺に対する不満?!なにかしてしまった?!)
はっ、とそんなことを思った空夜は、何を言われても誠実に謝ろうと思う。
航はとても優しいし、チャラチャラしてるように見えて真面目なのだ。
そんな彼の気に障ることなんて、きっと余程酷いことを無自覚にしてしまったのだ。
「俺、くーちゃんのこと……空夜のことが、好きだ。」
予想だにしない単語に、思考がフリーズする。
(すき?すきって、好き?)
「えっ、と……?」
首を傾げる空夜に、航が迫ってくる。
トン、と背中に触れたのは柱だ。
「わ、航?」
少し背の高い航を見上げる形になり、航がどんどん近くなる。
チュ、と一瞬だけ、柔らかいものが唇に触れた。
「……俺の好きって、こういう好きだから。」
(つ、つまりそれって、恋愛的な意味か!!!)
体は固まったままだが、思考がやっと動き出す。
「急に、ごめん。でも考えて欲しい。真剣だから。」
いつもの軽いノリはなりを潜め、航はとても真剣な表情でそう言った。
「……じゃ。」
航は荷物を持ち上げて、空夜の分も手渡す。
「……くーちゃんのこと光樹たちが待ってんだよな。途中まで送る。」
空夜は何も言えないまま、航と並んで歩いた。
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