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〜俊哉side〜
「お疲れ様でしたー!かんぱーい!」
「「かんぱーい!」」
光樹の父親の店の一角を借り、ジュースで乾杯する。
料理はとりあえずオススメを持ってきてくれるらしく、足りなければ追加してくれと言われている。
「とりあえずサラダきたから分けて食うかー、ナッツは入ってないから、霧谷も安心して!!」
「うん、瀬戸くんありがとう。」
光樹が手際よくサラダを分け、みんなの前に置いていく。
「とし?大丈夫?」
「へ?あ、悪い。ちょっと、ぼーっとしてたわ。」
「疲れてる?あんまり無理しないでね。サッカー部も明日部活だよね。」
「あ、あぁ……」
隣に座る宏樹と、斜め前にいる空夜から心配そうに声をかけられるも、俊哉は気のない返事をした。
「せっかくくーちゃんと話せるチャンスなのにどうした?」
空夜が京と兼と話している隙に、宏樹がつんつんとつついてきて、こっそりとそう言う。
「いや……」
それもこれも、先程見てしまった光景のせいだ。
*
光樹が来てからしばらく経っても空夜が来ず、代表して俊哉が空夜を探しに行った。
ゴミ捨てに行ったと聞いていたので、ホールのゴミ置き場の方にすぐに向かったのだが、見つからず、すれ違いになってしまったのかと入口の方に戻る。
空夜に電話をかけようとしたとき、誰かと話しているところを見つけた。
(あれは確か、隣のクラスの。)
名前は忘れたが、指揮を振っていた男で、吹奏楽部だったはずだ。
空夜とも仲良さそうに話していたところを見たことがある。
どうも話しかけられそうもない空気だったので、俊哉は階段の方で待つ。
パッ、と顔を上げた瞬間、2人の距離はとても近くなっていて、心臓がドクン、と跳ねた。
空夜は嫌がる様子もなく、男は顔をどんどん近づけて、ついにキスしてしまった。
(ま、まさか……付き合ってたのか……?!いつの間に?!)
遠足に行った時は確かに、恋人などいないと言っていた。
空夜は嘘を言っているようには見えなかったが、もしかして関係を隠したかったのだろうか。
しかしその考えはすぐに打ち消された。
こちらを向いた男の顔は真っ赤で、対する空夜はぽかん、としている。
これは、付き合っているわけではない。
恐らく告白シーンに出くわしたのだ。
*
その後タイミングを見計らって空夜を探しに来た、と2人に合流し、男はすぐにそれじゃ、と去っていった。
空夜は見られたとは思っていないのか、特に態度が変わることはなく、今に至っている。
空夜はモテるだろうとは思っていた。
けれど同時に、高嶺の花でもあるだろうと思っていた。
赤津琉の息子で、顔は綺麗、優しいところもあり、男女問わず人気がある。
告白するにはそれなりの時間がかかるだろうと。
しかし部活は盲点だった。
クラスメイトはまだ話したことの無い人もいても、部活は違う。
同じ目的のために頑張り、毎日練習を共にしているのだから当然仲が深まるのは早い。
うかうかしていたら空夜は彼に対する返事を決め、もしかしたら自分は何もせず失恋、なんてこともありえる。
しかし焦って告白したとしても、空夜にいい印象を与えないかもしれない。
赤津琉の息子だから、興味があると思われたのでは俊哉の想いも報われない。
芸能人の息子だからなんなんだ、と思っていたが、まさかこんなところで障壁になるとは。
俊哉が悩んでいる一方、宏樹の方は昨年も同じクラスだったのもあって、京と一定の仲の良さを保てている。
今も仲良く話しているし、あとは時間の問題だとも言える。
告白したあとどうなるかは俊哉の知ったことではないが、告白までは頑張ってもらいたい。
「むらちゃんお腹すいてないのか?食わねーのか?それとも嫌いなもん入ってたか?」
兼が宏樹の反対隣から顔を覗き込んできた。
それを聞いて前に座る京と、話していた宏樹もこちらを向く。
「とし、もしかして具合悪い?」
「村田くん大丈夫?」
(これ以上考えこむのはマジで心配させるな……とりあえず忘れよ。)
「いや、平気。樫本はさりげなく俺のサラダ狙わないで。」
「む!食べないならもったいないと思っただけだぜ!」
「かしけんは食べ物好きだよなぁ。」
「食べ物は幸せになるからな。」
光樹に向かってにぱ、と笑う兼は本当に幸せそうだ。
屈託のない笑顔というのは、なんだか心が浄化される。
「もうすぐメインくるんじゃないのか?サラダよりそっち食えよ。」
「むらちゃん優しい!」
色々と考えたいことはあるものの、今はとりあえず、空夜もいるこの打ち上げを楽しもうと決めた。
「ポテトもう一個くらい頼むかー。あとなんか欲しいもんある?」
刺身なんかも並び、随分豪華になったテーブルを見回して光樹が皆に訊ねる。
「俺パン食いたい!」
「はぁ?!パン?ガーリックトーストしかねぇぞ。」
「ガーリックトーストあるの!!それ食いたい!!」
「はいはい、かしけんはそれな。くーちゃんとか霧谷とかは?」
「俺鯛大好きだから、今ここにあるので十分。」
「え、くーちゃん鯛好きなん?じゃあご飯もの鯛めしにしようぜ!」
「えっ、いいよ!光樹、俺昨日も作ってもらってるから。」
「いいじゃんいいじゃん、鯛めしと、もう一個なんか……木之本とか決めてよ。」
「は?なんで俺?」
「いや、なんか、あんま意見言わなそうだから。」
「……じゃあ村田の好きなもん。」
「は?!」
唐突に話が回ってきて驚く。
昴流はもう話は終わったとばかりに目を逸らし、麦茶を飲んでいる。
「え……なにがあんの……」
「ご飯ものはー、ビビンバとかー、ちらし寿司とかー、今は季節もんあんまいいのねーけど。」
光樹が見せてくれるメニューを見ながら考える。
鯛めしを頼むなら、もうひとつは違ったものの方がいいだろうか。
「じゃあ、ビビンバ。」
「おけー。級長はー?」
「俺辛いもの好きだからビビンバあるならそれで嬉しい!」
「霧谷は?」
「俺、これ食べてみたいかも……」
京がちょうど真ん中にあるメニューを指さし、皆でそれを覗き込む。
「「ロシアンルーレット?」」
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