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〜明希side〜
「あれ、どうしたの明希ちゃん。」
「ん?ふふっ、院の子がくれたんですよ。」
帰ってきた翔也が、明希が花を持ってニコニコしているのを見て声をかけてきた。
「ええー!いいなぁ。俺も会ってみたい。」
「うーん、翔也さんはまだ難しい子かも……体格のいい男性が苦手みたいで。」
「えっ、そうなの?男の子?女の子?」
「男の子なんですけど、ネグレクトで院に来たみたいで……」
「そっか。じゃあもう少し先になるかなぁ……」
「そうですね……」
「俺も一生に行って、ちゃんと会いたいんだけど……ごめんね、任せる感じになっちゃって。」
「ううん!俺は最近院に行くのが楽しみで……養子を探すのももちろんだけど、俺と仲良くしてくれる子が増えてくるとなんだか嬉しくて。」
「そっか。」
にっこり笑った翔也は嬉しそうだった。
「その中から、俺たちを選んでくれる子がいたらもっといいなぁとは思いますけど。」
「うん。俺も、まだ会ったことないけど……俺たちと一緒に家族になる子がいたらいいなと思う。」
「……翔也さんは、本当に養子嫌じゃない?」
「嫌なわけないでしょ?養子をとって、その子がさ、俺たちのこと家族だと思ってくれて、辛いことは助けてあげて、俺たちも支えられたり、嬉しいことを共有したりしてさ……そうやって家族になっていくのって、きっと子どもを産んでも一緒だよ。子どもを産むのとは違う大変さもあると思うけど、頑張りたいって思う。」
「……うん。ありがとう。」
「いいえ!俺たちもまだ家族っていうのを探ってるわけだしさ?その子と一緒に、家族がどんなものか考えていけたらいいじゃない?」
「俺は、家族とうまくやっていけなかった時期もあったけど……うまくやれるかな……?」
「大丈夫。明希ちゃんはとーっても優しくて、周りのことをよく見てるから。きっと子どもと一緒に、俺たちみんな、家族になっていけるよ。」
最初からうまくいかなくてもいい。
みんなで家族になっていけばいい。
「……うん。」
*
「あきだ!」
「あきーおはようっ!」
「おはようみんな。」
「あききょうはどのくらいいるー?」
「あそべる?」
「うん、あそべるよ。今日は夕方くらいまでいるかな。」
「えー!やった!ながいね!!」
「あき、ぬりえしよー!」
「ぱずるがいいー!」
「みんなで同じテーブルでやろう?」
まつみや院について、千秋に案内されて部屋に入るとすぐに子どもたちに囲まれる。
それからテーブルについて、皆が遊んでいるのを見ながら、時々一緒にやったり、絵を見たりする。
しばらくそうしていると、じっと視線を感じた。
(あれ、星くんだ。)
「星くんも一緒に遊ぶ?」
振り返って声をかけると、男の子は迷う様子を見せた。
「おいで、なにもしなくてもいいんだよ。」
にっこり笑ってそう言うと、こちらにやってきて、明希が座っている椅子の隣、床に腰かけた。
「寒くない?」
コク、と頷いて、それきり顔はこちらに向かなくなり、動く様子もなくなった。
「あそばないなんてへんなのー。」
子どもたちには悪気は無いのだろう。
けれど自分たちと違うものに違和感を感じて、それを上手く伝える術を持っていない。
その結果あまりいいとは言えない言い方になって、馴染めない空気になってしまっている。
(でも、俺がなにか口を挟むのも違うしなぁ……)
迷ったものの、明希はただ、見守るだけにした。
「……はなばたけ。」
「うん?」
皆が自分たちの遊びに夢中になり、楓が顔を出したことで明希から少し離れる子が増えると、男の子がポツリと呟いた。
「はなばたけいく。」
「うん、行っておいで。俺はここで待ってるから。」
「……いっしょに、いく。」
「一緒に?いっていいの?」
コク、と頷いた男の子は歩き出してしまい、明希は楓を振り返る。
行け行けと目で訴えられ、明希は後を追った。
「お邪魔します。」
花畑のところでそう言うと、男の子に手を掴まれ、グイグイと引っ張られる。
「どうしたの?何かあるの?」
手を引かれるままに歩いて、ある一角に着くと、そこには綺麗なコスモスが咲いていた。
「このまえ、さいた。」
「うわぁ、綺麗だね!たくさんお世話してあげたの?」
「……ん。」
「星くんは頑張り屋さんだね。」
「……ほめて。」
「うん?」
「ほめて、ほしい。」
ぎゅっとズボンを握って、小さな声でそう言った。
「みんなと、おなじみたいに……」
さっきまでいた部屋で、明希は子どもたちを褒める時には頭を撫でていた。
どうやらそれをしてほしいらしい。
「触っていいの?」
触られるのもあまり好きではないと聞いていたので、明希は念の為確認した。
男の子がコク、と頷いたので、明希はそっと頭を撫でる。
「星くんはとってもいい子だよ。頑張り屋さんで、お花のお世話をちゃんとして、大切にしてるもんね。」
「おれ……」
「うん?」
「おれ、あきと、もっとなかよくなりたい。」
「うん、もちろんだよ。これからたくさんお話しようね。」
勇気を出して言ったようで、明希がそう答えると男の子は安心したように息を吐いた。
明希は、こんな風に心を開こうとしてくれていることが嬉しかった。
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