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~昴流side~
10月7日
「え?!髪の色変わってんじゃん!」
体育祭前日、部活終わりに美容院に寄って髪を染めてきた。
明希には何も言われなかったけれど、仕事から帰ってきた翔也は昴流の髪を見て驚いている。
「……なぁ、まだ気がついてねぇの?」
「そうみたいだねぇ。」
既に気がついているらしい明希に聞けば、クスクス笑う。
やはり明希は昴流がどういうふうに髪の色を変えているかわかっている。
「1年おきだったのになんで?!」
「明日体育祭あるから。ちょうどいいかなって。」
「今度は青?!半年後には黄色になるの?!信号機か??」
「うるさっ。」
「母さんはわかってるんでしょ?いい加減教えてよー!」
「自分で気がつくか昴流に教えてもらってくださいって言いましたよね?」
明希はそう言ってすぐにキッチンに戻ってしまう。
翔也はチラッとこちらを見てきた。
「教えないわ。」
「ですよねー。えぇぇ?なんなの?母さんにわかって俺にわからないのはなんで?」
「やっぱ母さんの方がすごいわ。」
「えーやだー。俺は昴流の父さんなんですが?」
「それなら自分で気がつけばーか。」
「お?口が悪いぞこら!」
べーっと舌を出して笑うと、翔也はまたこら!と言う。
「つーか気がつかないの鈍感すぎる。な、母さん?」
「そうだね。これに関しては、翔也さんが鈍感すぎると思うなぁ。」
自分がした髪色なのだから、覚えがあってほしいところだ。
「うーん、なんだぁ?昴流が今までした髪色……」
考え込んで、うんうん唸っている翔也がおかしくて、明希と顔を見合わせて笑った。
「……あ!!!!」
「うわ声でかっ。」
「やっと気がついたかな?」
「えっ、嘘、え?ほんと?昴流、ほんと??」
「……気がついたら気がついたでうぜぇな。」
明らかに嬉しそうな顔でこちらを向く翔也の様子から言って、正解に気がついている。
「反抗してると思ってたけど、本当はそんなこと無かったんだね?父さん嬉しいんだがー!」
「うっわ、やめろよ!」
むぎゅむぎゅと抱きついてきて、わしゃわしゃ頭を撫でてくる。
「いや、うざい、うざすぎ!」
「なんて可愛いのうちの子!」
「親バカかよ。」
「親バカで結構!可愛い!うちの子天才!!」
「俺のことになるとバカになるのやめてくんね?」
翔也と昴流のやり取りを見ながら、明希はニコニコ笑う。
あぁ、いいな、なんて。
こんな風に温かい空気と、家族の良さを感じる。
それがむず痒くて、けれど心の奥の方が温まる。
欲しくて欲しくてたまらなかったものが、今はここにある。
この人たちは自分を捨てないと、置いていかないと確信できるようになった。
「こんなに可愛いことされたら、俺も明日の体育祭見に行きたくなっちゃう。」
「は?来んな。目立つから来んな。母さんは来るんだよな?」
「うん、恋と傑と一緒に行くよ。」
これはこれで目立ちそうだが仕方ない。
翔也や琉がいるよりはマシだろう。
「ねぇなんで?なんで父さんには冷たいの?」
「まじで目立つんだよ、父さんは。」
「確かに翔也さんは目立っちゃいますね。」
「うーん……変装してもダメ?」
「変装してもダメ。」
「まあでも確かに……俺が目立っちゃうのはよくないし……ビデオ撮ってきてね?」
「ふふっ、わかってますよ。」
「え?ビデオは取らないで。」
「どうして?」
「なんか恥ずかしいじゃん。」
「全部は撮らないから、撮らせてくれない?」
明希にそうお願いされると、断りづらい。
「はぁ、まあいいか……本当に全部は撮らないでよ?」
「うん、約束する。」
「まあ仕方ないか……全部見られなくても……ここは妥協して……」
ブツブツと言っている翔也は無視して、昴流も明希を手伝おうとキッチンの方に行った。
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