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マグカップ
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〔 雅 side 〕
今日の仕事は大変だったとか 、 上司に怒鳴られたとか 、 そういった話を聞きながら珈琲を淹れた 。
雪は俺の隣でジッとしている 。
粉末のインスタントコーヒーにお湯を注ぐと 、 辺りは苦い匂いに包まれた 。
「 雪の珈琲は甘くしてやるからな 。 」
「 うん …… 。 」
松田と三浦にはブラックのまま出して 、 雪用にミルクと砂糖をたっぷり入れたカフェラテを渡した 。
ふ〜 、 と冷ます唇が愛しい 。
お土産として貰ったお菓子も皿に出して 、 テーブルに並べていく 。
雪を連れてダイニングに移動すると 、 俺の膝の上に座らせて好きにさせた 。 チョコに手を伸ばして 、 俺に食べていい?と確認するよう見上げる 。
掌に収まったチョコを摘んで包装紙を取ると 、 そのまま雪の口の中に放り込む 。
瞳を輝かせて舌の上でチョコを転がす雪 。
その姿を 、 三浦は微笑ましげに見ていた 。
「 可愛いっすね〜 、 雪くん 。 もぐもぐ食べちゃって 、 俺まで美味しいっす 。 」
「 何言ってるんだよ三浦 、 気持ち悪いだろ 。 」
いつも通り無表情な松田は慌てて三浦に釘を指した 。 その二人を見て 、 雪は俺の膝から降りてしまう 。
ぽてぽてと二人に近寄る雪を目で追った 。
二人の掌にチョコを一つずつ乗せると 、 すぐに俺の元へと帰ってくる 。
何をしたかったんだ?
ただチョコをあげたかっただけだろうか 。
今の雪は自分の気持ちを言葉にしないから 、 本人が考えてることがよく分からない 。
「 え 、 チョコっすよ!雪さんからのチョコっす!! 」
「 先輩 … 誘拐されないようにしてくださいね 。 」
俺も不安に思っていたところだ松田 。
今は特に声を出せない状況だから 、 何か起こってもすぐに気付いてやれない 。
そうなると 、 不安なのは雪だけじゃない 。
どうにかしてやらないといけないんだろう 。
しかし頭の弱い俺には何も思い浮かばない 。
どうすれば雪は笑う?どうすれば泣かせずにすむ?
ここまで追い込んでしまった俺が隣にいていいのだろうか 。
「 …… 先輩 、 先輩の家族には雪くんのこと話してるんすか? 」
今までチョコを貰えたと騒いでいた三浦が 、 真剣な顔で話しだす 。
こいつのギャップが好きだ 。 ヘラヘラしてる反面 、 何事にも一生懸命で人脈が広い 。 それに加えて的確なアドバイス 、 個性的な考え方を持つ 。 松田と真反対な性格だからこそ 、 俺はこいつを部下に選んだ 。
「 今の状況を見るに 、 先輩が家を空けてる間だけでも雪さんの隣には誰かが居るべきです 。 」
いつも無表情な松田は 、 やけに焦った表情でそう言った 。
こいつはいつも何を考えているか分からない 。 だが 、 天然さを加えて頭の回転が早いところから色々な方面から物事を考えることができる 。
信頼をおける確実な意見を持っているから一緒に仕事をしたいと思ったのだ 。
この二人のペアが成り立ってこそ 、 満足な仕事が出来ている 。
そんな二人からの言葉に 、 俺は唸った 。
親には全て話した 。
雪の存在 、 雪の過去 、 現状 。
母親も父親も連れてこいと言っていたけど 、 俺は雪を想って行っていなかった 。
ただでさえ毎日のように両親から暴力を受けて育ってきたのだ 。 俺の両親に合わせたところでパニックになりかねない 。 いつトラウマを引き起こすか分からないのだ 。
「 お前らも知ってるだろ 、 雪の家事情は 。 」
「 だからこそっすよ 。 手を上げない先輩の家族には 、 心を開けるんじゃないかなって 。 今の雪さんなら 、 大丈夫だと思ってるっす 。 」
「 俺も同意見です 。 先輩が仕事の間だけでも預けられるように 、 会わせてみたらどうですか? 」
名案かもしれない 。
ただ 、 あの母親に会わせるのはどうも気が引ける 。
自分の母親とは言っても 、 やっぱり不安は不安だ 。
それは雪の事情を知っているからこそ 。
いや 、 そうじゃなくともきっと不安だ 。
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