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〔 雅 side 〕
俺が両親に頭を下げたのは 、 これが人生で初めてだ 。
大学へ行こうとしたのは父親の意思だったし 、 警察にお世話になるような男ではなかった 。
それに 、 俺が頭を下げることになるのは雪のことだろうと予感はしていた 。
今 、 両親はどんな顔をしているのだろう 。
「 雅 、 顔を上げなさい 。 」
凛とした 、 母さんの言葉にゆっくりと顔を上げた 。 しかし目線は上げられずに 、 俺は握り拳へと視線を向けるしかない 。
隣に座る雪は 、 俺の腕に手を添えてじっとこちらを見ている 。
「 お前が頭を下げたということは 、 それなりの思いを持って下げたんだろう 。 」
父親はいつものように 、 ゆっくりと喋り始めた 。
この人はいつもそうだ 。 決して頭ごなしに俺の言葉を否定しないし 、 最終的には好きにしなさいと放っておいてくれる 。
放任的な二人の性格 。
俺が素直にこの家に来れたのも 、 この両親が居てからこそだと思っている 。
「 …… 雪がこうなったのも 、 俺の責任だ 。 雪なら大丈夫だと思っていたことが 、 負担になっていたんだと思う 。 昨日 、 俺が仕事から帰ってきたら部屋がグチャグチャで 、 怯えてたんだ 。 」
「 まぁ … どうしてもっと早く連絡をくれなかったのよ 。 言ってくれれば 、 すぐにでも駆けつけたのに 。 」
「 俺が 、 俺がどうにかしたかったんだ!傷つけたのはこの俺だ 、 ずっと隣にいたいのも俺だ 。 俺が 、 全部やってやればいいって思ったんだ 。 」
俺がどうにかできる 。
そう思ってたけど 、 それはただの願望だ 。 雪を救うには 、 俺の力だけじゃ足りない 。
どうしたって 、 俺がいない間は一人になる 。
またこんな事があれば 、 もっと傷つくのは雪だ 。
「 お前の気持ちも分かる 。 ただお前は 、 自分の願望じゃなく雪くんのことを優先したんだろう? 」
「 ……… あぁ 。 そうじゃなきゃ 、 俺が雪といる意味がないだろ 。 」
「 随分と 、 男前になったな 。 面だけじゃなく 、 心も 。 」
父さんはそう言って 、 優しく微笑んだ 。
俺は体格も顔も父さんに似た 。
小さい頃から頭が良くて 、 周りに期待されるのが大嫌いだった 。 プライドは高くて 、 アメとムチがしっかりしている 。
だからこそ 、 俺は幾つになっても父さんが偉大な人物だと思っているのだ 。
いつまでも勝てない相手 。
そんな父さんに認めてもらえたことが何よりも嬉しくて 、 必死に涙を堪えた 。
「 私が家まで行って雪くんと遊んでいるから 、 雅は安心して仕事してきなさい 。 」
「 なにか必要なものがあれば何でも言いなさい 。 出来るだけのことはしてあげるから 。 」
母さんはニコニコ笑いながら雪の隣に腰掛けて 、 その頭を撫でる 。
雪も嬉しそうにはにかんで 、 俺を見上げた 。
その顔はとても幸せそうで俺の思っていた不安は無さそうだ 。
母さんが淹れてくれた珈琲は 、 俺が愛用していたマグカップに入っていた 。
そんな所も優しい両親らしい一面だ 。
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