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死人に口なしと言うわけだ。
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「…と、まぁここまでが僕の昔話だったがいかがだったかな?ウォーリー」
お茶を片手にリアムは昔話に浸っていた。
「そ、壮絶なものだったんですね…。何故こんな話を私に?」
聞いたのはこちらだがまさか本当に言うとは思わなかった。何せあの慎重なリアム伯爵がプライベートの話を私にするなんて。それだけ信頼されたということならば良いがもし逆であればまずい。何がまずいか?それは今日私はリアム伯爵の会社、パクトリー社と契約を結び資金を頂かねばならないのだ。僅か、九歳にしてこの会社を立ち上げ三年で世界的、有名にした末恐ろしいガキだ。しかし所詮はお子ちゃま。上手く話せば資金くらい…。
「何故だと思う?」
リアムは少し間をあけウォーリーの問いをまた問う。
「いやぁ何故でしょうな。それよりリアム伯爵、資金のことですが伯爵にとっても悪い話ではございません。事業として成功すれば私の会社の儲け金の三%いや、七%を…」
と言いかけた時リアムが口を開いた。
「そんなことより僕とゲームをしないか?君が勝てば契約を考えてやろう。」
「本当ですか!」
「しかし僕が勝った暁にはお前の悪事を全てメリウス公爵に伝えさせてもらうぞ。」
「あ、悪事?なんのことでしょう。」
「隠しても無駄だ。お前が僕の資金を使って違法薬物を売りさばいていることは分かっている。」
ウォーリーは驚き苦虫を潰したかのような顔で呟いた。
「く、くそう…」
ウォーリーはリアムの元から逃げ出した。
「おや、お客様どちらへ?」
青白い顔をし、すらりと身長が高い燕尾服の男がウォーリーに近寄る。
「どけ!!」
ウォーリーは燕尾服の男を押しのけ屋敷内を走り出口へ向かう。(逃げさえすれば俺の勝ちだ!)ウォーリーはもう寸前で出られるところまで来ていた。しかし耳元で死を予測させるかのような声が聞こえたのだ。
「やれやれ、騒がしいお客様ですね。せっかく、デザートのケーキができたというのに。」
ウォーリーは仰天した。(この執事とすれ違ったのは三階だぞ…それに出口に繋がる階段は一つだけ、俺とすれ違わず俺より先回りなんてできるはずが…)
「ゲームはしないという事で宜しいか?ウォーリー」
コツ、コツと階段を降りる音がする。玄関先には執事が、玄関へ繋がる階段にはリアムが、ウォーリーは挟み撃ちにされてしまった。ウォーリーはリアムに向かって走りリアムを腕で拘束する。
「おい!執事!早くそこをどかねぇとお前の主を殺すぞ!」
ウォーリーは自身の胸元からナイフを取りだしリアムの首元に押さえつけた。
「それは困りましたねぇ。どうしましょうか、旦那様。」
「ふざけるのも大概にしろ。アルフレッド、今すぐ僕をここから助けろ。こんな無様な姿をいつまで晒させる気だ。」
「いいのですか?私が助けてしまえば旦那様は殺されてしまうらしいですが…。」
にやにやしながら執事は喋る。
「僕の命令が聞こえないのか?今すぐ僕をここから助けろ。お前ならこんな屑から僕を無傷で救出することくらい容易いだろ。」
「ふふ、承知致しました。旦那様。」
かつかつとウォーリーに距離を詰める執事の目は淡く光っていた。
「はは…とうとう頭がおかしくなっちまったか?」
ウォーリーにとってこの異常な光景は恐怖でしか無かった。
ウォーリーは勢いよくリアムに向かいナイフをふるったが、切れていたのはナイフを持っていたはずの自分の手だった。ウォーリーは驚愕した。(何が起きたんだ…?!)いつの間にかリアムも自身の手の中から消えており代わりにリアムは執事の元へ。自身の腕は宙へ舞っていた。
「無様だな。僕が何故昔話をお前にしたか教えてやろう。お前はここで死ぬ。僕が話したところで死人に口なしというわけだ。安らかに眠れ。ウォーリー・アーガル。」
ウォーリーが最後に見たものは小さな死神と執事だったという。
「最悪だ。僕に返り血が浴びないように処理できなかったのか。」
リアムの気分は最悪だった。あの汚らわしい者に掴まれたうえ、返り血まで浴びたのだ。
「それは失礼しました。ご命令されてませんでしたので。次回からそう致しましょう。」
「ちっ」
リアムは執事に聞こえるように舌打ちをした。
「風呂の用意をしろ。」
「仰せのままに。」
執事は上品にお辞儀をしリアムの元から消えた。
入浴後、リアムはベッドで寝る準備をしていた。いつものようにコンコンと扉を叩く音がする。
「入れ。」
「失礼致します。白湯をお持ちしました。」
「あぁ。」
僕はティーカップに入った白湯を飲み干す。
「旦那様、ご就寝される前に一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」
「構わない。」
「ありがとうございます。旦那様は何故先程あの男に能力を使わなかったのです?まさかとは思いますがご自身で手を下すのが怖かった…とか。」
リアムは不機嫌そうにしてこう言った。
「僕を馬鹿にしているのか?それに僕を守るのはお前の仕事だ。僕に手を煩わせようとするな。」
予想外の答えにアルフレッドは少し驚きそして笑った。
「ふふ、そうですね。私は執事、貴方は主。私は貴方に尽くし貴方が死に至るまで私は貴方の…。」
「僕はもう寝る。お前は好きにしろ。」
「御意。おやすみなさいませ、旦那様。」
部屋の灯火が消え扉を閉める音だけが静かに響いた。
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