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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第1話 高校生
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高校生になれば、当たり前のように新しい友達ができると思っていた。
実際中学まではいくら暗くて人と話すのが苦手でも、最低限の友達くらいはいたのだ。なのに────。
「佐山、パン買ってこい。お前の奢りな」
昼休み。自分で作った弁当を広げていると、クラスでも一番目立つ所謂陽キャのリーダー格沢田に声をかけられた。周りには似たようなカーストトップ勢が集まっている。
「え〜、かわいそうじゃない?」
そんなこと微塵も思っていないであろう口ぶりで、近くにいる派手目な女子たちの一人が言った。その目は明らかにこちらを見下し、馬鹿にしているようだ。
「良いんだよ、断られたことないし。そだ、お前らもせっかくだし頼めよ」
「良いの〜?じゃあ私ハムサンド」
「私メロンパンがいいなぁ」
「俺も頼むわ!まずカツサンドと……」
一連の会話に俺の意思は介入していない。
とは言っても買えるものには限界がある。アルバイトはしていないから、毎月のお小遣いで生計を立てなければいけないのだ。
「あの……俺、今月金がな」
「あ?何?文句あんの?」
「っ……」
その一言で、背筋が凍る。
────元々、頼まれごとにも、威圧されることにも弱かった。困っている人は放っておけないし、脅してくるような奴らに対抗するような勇気も無い。
考えれば昔からこういった“便利者”という扱いをするにはぴったりで、今までこうならなかったことの方が奇跡なのだ。
「……行ってくる」
「最初からそう言っときゃいいんだよばーか。5分以内な!」
俯いたまま教室を後にすると、わざとらしい笑い声が外にまで聞こえてきた。
……言っておくと、俺はいじめられているわけじゃない。暴力をふるわれているわけでも、暴言を浴びせられているわけでもない。
ただ、言われたままのことをやっているだけ。まあ、パシリってやつだ。
だけどそれを俺はいじめだとは思っていない。あんな辛いものよりももっとずっとマシで、気楽なものだ。
────高校生になれば、当たり前のように新しい友達ができると思っていた。
だけどそんな甘い考えは入学ひと月ほどでかき消えてしまった。
いいんだ、別に。俺は、いじめられているわけじゃないから────。
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