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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第2話 出会い
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終業のチャイムが鳴り、いつも通り担任の当たり障りのない話によってHRが終わる。
やっと終わった。そう安堵したのもつかの間
「な、みんなでカラオケ行かね?」
「いいじゃん!行こ行こ〜」
「いいね〜」
「お、いつメン揃いそうだな。じゃあ後は……」
帰る支度をしていると、唐突に沢田が大声をあげ始めた。そうしてゆっくり教室を見渡し、俺に目を向ける。
「佐山」
「……な、何?」
「カラオケ行こうぜ」
「……え?」
思わぬ誘いに口が開く。周りも意外だったようでぱちぱちと瞬きをして沢田を見ている。
何も言えずにいると、沢田は一見すると爽やかな笑みを浮かべた。
「荷物持ちだよ荷物持ち!店着くまでみんなの荷物持ってろよ、重いから」
「…………」
……そんなことだろうとは思っていた。
だけど、なぜだろう。あんな奴に誘われたって嬉しくなんかないのに。
期待、してしまった。
周りは沢田頭いい〜とけらけら笑っている。
頭が痛い。だけど、きっと拒否権はない。
どうせ俺に予定なんかないし、あったところで無駄なのだろう。
「じゃ、これよろしく」
ドサドサと多種多様なキーホルダーのついたカバンが、ざっと八つほど机に乱雑に置かれる。そのくせ「落としたりすんなよ」などと言ってくるのだ。けれど、言い返す強さなんて俺にはない。
四つに分けて恐る恐るカバンを持ち上げてみる。特に普段から勉強していなければ真面目に授業を受けているようにも見えない彼らのカバンの中身はたかが知れていたようで、思っていたよりは軽い。これならなんとか持ち上げられそうだ。
……これを店まで持って行けるかは、また別の話だけど。
「早くしろよ。お前そんなんじゃ店閉まるだろ」
必死に歩幅を合わせ沢田を中心としたグループについていく。
……靴箱までは来たけど、履き替えるのがかなり難しい。一度カバンを床かすのこに置かなければいけないけど、それをするときっと怒られるのだろう。なんとかカバンを一気に肩にかけ、自分の靴箱を開ける。
けれど肩に一気に重力がかかってしまったせいでふらつき、近くにいた誰かにぶつかってしまいはずみで盛大に転けてしまった。
「おい!お前何やって……」
あれだけ気をつけていたのにカバンが床に散らばり、沢田が声を荒らげる。しかしその怒声が最後まで続けられることはなかった。
「いったた……す、すみません」
疑問に感じながらもとりあえず助かったと今しがたぶつかった相手を見上げる。
「………………あ」
そして、一瞬で理解した。
沢田や、その周りにいる奴らまでもが一瞬で静まった理由。
それは、ぶつかった相手が“あの”天宮 優だったからだ。
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