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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第7話 助け
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独特の不愉快な音と共に、錆びた扉が開いた。
そこには、一人の男を数人がかりで押さえつけている柄の悪そうな男たちの姿があった。この辺りでは見かけない制服を着ていて、高校生のように見える。
手前に立つ人物のせいで顔はよく見えないけれど、押さえつけられている人物とは制服が同じだ。つまり同じ学校の人が襲われているということになる。
「あ?何だお前」
見るからに不良という出で立ちの男たちがこちらを睨みつける。
そして、それを他人事のように離れたところで眺める一人の男。
一見整った顔立ちをしているけどかなりの高身長で、立ち振る舞いから威圧感が放たれている。
一瞬で理解した。
こいつがリーダーで、誰かを襲って……襲わせているのだと。
一見は全員が不良でただの喧嘩にも見えるけど、数人がかりで無理やり押さえつける行為は喧嘩でもないし合意の上でもないだろう。
「……け、警察に通報した。すぐにここに来る。今すぐその人を離せ」
……とは言ったものの。
先程の決意から何も考えずに足が動いてここに来てしまったわけで、つまりは呼ぶことすらしていない。
助けるにしてもせめて呼んでからにすれば良かった……!
つくづく馬鹿だと後悔しても、今更遅い。
「……ど、どうしますか?」
内心かなり焦っていたけど、なんとか数人がかりの内の数人は信じてくれたようで、焦ったように長身の男に問いかけた。
「ふうん……」
その問いには答えず、男はまじまじと俺のことを眺めると笑みを浮かべた。
「……ま、そういうことにしとくよ。今回は“試したかった”だけだし」
そしてそう呟くと、「行くよ」とだけ言い残し俺の横を通り過ぎて行く。
この人数じゃ絶対に俺も集団リンチに近いものになると思っていただけに、呆然とする。
「ちょ……ちょっと!」
咄嗟に振り返って声をかけると、男がぴたりと足を止めこちらを少しだけ見た。
「……まだ何か用?」
「っ……い、いや」
その目には、生気が感じられなかった。
前に見た、天宮の殺気のこもった目とは違う。
本当に何も無い、そこにあるのはただの暗闇。俺すらも映し出されてはいなかった。
あれは、本当に人間なのだろうか。
ぞっとして何も言えずにいると、男は虚ろな笑みを浮かべて
「それじゃあ、“またね”」
と言い残し去っていった。
「ま、待ってくださいよ幸也さん!」
「てめえ、覚えてろよ!」
誰かを囲んでいた男たちは、幸也と呼ばれた男に慌ててついていく。
途中には捨て台詞を吐く奴もいたけど、幸也とやらが手を出さなかったおかげか特に何事もなくこの場をきりぬけることが出来た。
……正直助かった。
まさかあんなに多人数だとも思っていなくて、危うかった。
天宮の時もだけど、運がいいのかもしれない。
……いや、危ない目に遭う時点で運は悪いのか?
って、今はそれどころじゃない。
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