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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第11話 偶然にも
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自分たちのクラスや職員室がある校舎と、音楽室や放送室などの特殊な教室とを分ける一階の渡り廊下の横に自販機はある。他にもいくつかあるけど、自分のクラスからならここが一番近い。
さすがにもうすぐ授業開始ということもあって、周りに人気はなかった。そもそもが向こうの校舎に用があることが少ないため、当然といえば当然だ。
そういえば買うものを聞いていなかったけど、沢田はこういった時大抵コーラを頼んでくる。
それでいて急げ、ただし振ったりするなと無茶振りをしてくるのだ。
そう考えるとあえてのそのチョイスなのかもしれないけど関係ない時にも飲んでいるのは見かけたしもうそれでいいだろう。
ついでに落ち着くために自分の分の麦茶を買って喉を潤す。冷たい液体が喉を流れていく感覚が心做しか少し落ち着く。
そう思いながらふと横にある渡り廊下の先を見て────。
「んぶっ!!」
思わず麦茶を吹きそうになり、慌ててせき止めた。それから急いでしゃがみこむ。
渡り廊下は両脇を肩くらいまでの壁と手すりで囲われているから、こうしてしまえばこの自販機に行く用事でもない限り中側から姿が見えることは無い。
そう、タイミングの悪いことに視界にとらえたのはあの天宮だったのだ。何か用でもあったのか、向こうの校舎からこちらへと不良ではなく至って普通に見える男と歩いてきている。
早めに気づけたこともあり俺の姿は隠れるところも含め見えていないようで、二人は何気ない会話を続けていた。
「優、昨日どこ行ってたの?結局俺の家来なかったよね」
「行かねえって言っただろ」
「そう言いつつ、いつもは来てくれるじゃんか」
どうやら親しい友人のようだ。友人はいない、いるのは手下だけという噂だったけどどうやら噂にすぎなかったらしい。
「うるせえな。他校の奴らにちょっかい出されたんだよ」
「え!?大丈夫なの?」
「……いつものことだろ。実はあんま記憶ねえんだよ。ただまあこのとおり無事だ」
「何それ。記憶ないって……」
「それよりも誠。お前いい加減他に友達作れ。お前と一緒にいると周りの目が気になってしょうがねえ」
「なんで?俺は優がいればいいよ。それより今日の授業出ないの?」
「……探し物がある」
「何それ?手伝うよ────」
……盗み聞きのつもりはなかったけど、結構聞こえてしまった。
というかあの一緒にいた人は何者だ?見た目は普通に見えたけど、まさかあの天宮とも対等に話すとは……。
それよりもそうだ、記憶!
あんまりないってことは、やっぱり昨日のあの時のことは覚えていないようだ。何かがとち狂っていただけらしい。
それに様子も平常だったし、体調も大丈夫そうだ。
良かった。
天宮も、そして俺も。
ほっと一息ついたその時、始業を告げるチャイムが鳴った。
「あ……!授業!!」
すっかり忘れていた。急いで教室に向かったけど、当然間に合うはずもなかった。
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