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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第14話 終わりの始まり
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「見つけたぞ。佐山 春」
その一言で、堰を切ったように教室がざわめき出した。
「え、あれってあの天宮?」
「うわ、佐山目つけられたのかよ……終わったな」
「やだ、怖い……暴れだしたらどうしよう?」
俺一人が目当てであると分かり、もはや言いたい放題だ。
いやまあ、俺が人生終わったのは事実なんだけども。
そんな喧騒の中でも、天宮は気にせず口を開いた。
「昨日のこと、忘れたとは言わせねえぞ……?」
「は、はひ……」
ここで嘘をつけば余計酷いことになると察して、正直に頷く。と言っても恐怖で固まっていて傍から見てきちんと頷けていたのか定かではない。
そして正直に言ったからといって罪が軽くなる保証はない。せいぜい苦しまないように殺してもらえるかどうかか……?
というかさっきの覚えてないって話はなんだったんだ!ひょっとして話したくなかっただけ……?
それってつまり昨日のことは誰にも話したくない黒歴史ってことで、そしてその黒歴史を知る唯一の人物……すなわち俺を抹殺しにここに来たと。
ああ、終わった。ついに。
「おい天宮!授業の邪魔は……」
「ああ?」
「……いやぁ……その……」
国語教師が果敢にも何かを言いかけたが、天宮がその殺意満点の目を向けるだけで黙り込んでしまった。
今まで彼が直接授業の邪魔をしたという話は聞いたことがないから、対応にも困るのだろう。
ああ、なんとも情けない。けど仕方ない。
この場の誰も、天宮には逆らえないし逆らったとしても勝てないだろう。
むしろ殺される。
そのあまりの迫力に、騒いでいた連中もいつの間にか静まり返っていた。
「…………」
暫しの沈黙が流れる。クラスメイトの恐怖と好奇心とが入り交じった視線が背中に突き刺さって痛い。
対して俺は天宮を見るでもなく、空中に視線を泳がせてこれまでの人生を思い返していた。最早俺にできることはこれくらいだ。
けれど天宮はこの場で俺を瞬殺するでもなく、やりやすいよう校舎裏とかに呼び出すわけでもなくただ黙っていた。
先程までの殺気は何処へやら、さまよう視線でちらりと横目で様子を窺えば何かに迷っているようにも見えた。
ごくり、と生唾を飲み込む音がどこかから聞こえた。
きっと今、他の人たちは凄惨な状況を見る覚悟を決めているのだろう。
「……昨日」
「っ……!」
どのくらい時間が経っただろう。永遠にも等しく感じられた沈黙が、他でもない天宮によって破られた。
彼は何やら口を開き、あろうことかこちらに手を伸ばしてきた。
あ、死んだ。
どうやら彼が選んだのは首絞めの刑だったらしい。
抵抗することもできず、ただ近づく手をぼんやりと眺める。
傷だらけだけど、よく見れば昨日も感じたように白くて細い手だ。なんて、殺される今なら本人に言っても良いのだろうか。
と、思っていると。
その手が向かっていた先は俺の首ではなかったようで、するりと俺が膝元でひたすら握りしめていた手が温かさに包まれた。
「すぐ帰っちゃって……俺、寂しかったんだぞ?春くん」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ぇ?」
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