アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第16話 ひとまず
-
ひとまず、俺と天宮は屋上へと足を運んだ。
普段はどうやら天宮を筆頭とする不良たちが根城にしているのだけど、当の天宮がここにいるため誰もいなかった。
彼のいないところで好き勝手にすることを他の不良たちは何よりも恐れているため当然と言えば当然だ。
「えっと……天宮?」
「優ちゃんって呼んでって何度も言ってるだろ?」
「ユウチャン」
「何?」
「この腕はなんでしょうか……?」
そう、絶賛俺は優ちゃん……じゃない、天宮に腕を組まれている。それはもうがっしりと離さないとでも言いたげに。
ボタンを開け放った学ランの下は薄着なようで、彼の体温が布越しに伝わってくる。
「……え?」
「……ナンデモナイデス」
俺の問いに、天宮は笑顔で首を傾げた。けど目は笑ってない。
離してくださいと言えばそれこそ殺すと言わんばかりの殺意がそこにはあった。
人って笑いながらこうも殺気を出せるものなんだ。勉強になった。
「と、とと、とりあえず、昨日のことなんだけど……」
「ああ、昨日!春くんも覚えててくれて良かったよ!」
俺の言葉に天宮があっさり腕を離し、嬉しそうにその場をクルクルと回った。
これ、この学校の天宮を慕う……というか従わされてる不良が見たらショック死じゃ済まないのでは?
「う、うん……昨日、えっと、変な薬とか使われなかった……?」
かく言う俺も今にも卒倒しそうなのを何とかこらえ立っている。
そしてそう、これが聞きたかったことだ。
あの部屋の甘い匂いは、確かにキツイものではあったけれど多分あれが原因じゃない。
ならきっと、他に天宮がこうなった原因があるはずだ。
こんなことになるような変な薬があるなんて普通は思わないけど、例えば漫画に出てくるような……性格を変える薬とか、もしかしたらあったりするかもしれない。
それにしても、最初に教室に来た時の天宮は普段通りに見えたけど……。
「薬?さぁ……昨日は普通に帰ってたんだけど、途中であいつらに不意つかれて捕まったんだ。それで押さえ込まれたけど、それだけだな」
天宮は回転するのをやめ、昨日のことを思い出している。これだけ見るとちょっと親しげなだけの普段通りに思えなくもない。
そして俺が思っていたような薬云々を飲まされたということはないみたいだ。
つまり、どういうことだってばよ?
「そ、そうだったんだ……知り合い?」
とりあえず他に何か原因があるかもしれない。今はとりあえず下手に刺激しないようにしながら、何気なく会話を続ける。
「一回ボコした奴。報復に多人数で来るのはよくあることなんだけど、昨日は……その」
「?」
さらりとボコしたと言ってのけるところは不良そのものだ。ただその後はなんだか歯切れが悪い。
「とにかく!捕まってて動けなかったところにお前が……春くんが来てくれて」
何やら言いたくない事情があるらしい。そこにこうなった理由があるなら問い詰めたいけど、無理やり聞き出そうとして殺されたくはない。
いや……今の状態なら殺されないような気もするけども。
「そ、それで……?あの、昨日言ってたことって……」
遠回しに、昨日こく……はく、された事を尋ねる。天宮が最初におかしくなったのはあそこからだ。今はとにかく情報が欲しい。
「勿論、本当だよ?俺はお前のことが好きだったんだ」
そちらに関しては照れることもなく、天宮はさらりと答えた。
「い、いつから……?」
「そんなの……どうでもいいだろ、別に。そういえば昨日飲まされたジュースめちゃくちゃ甘ったるくてさ、その味がもうずっと舌に残ってて」
どうやら俺に惚れた……?理由についても答えたくないらしい。はぐらかされてしまった。
結局、原因は分からずじまいだ。分かることはただ一つ、天宮がおかしくなって俺を好きになっている(不確定事項)ということだけ。
からかわれているのかもしれないと思ったけど、昨日の一対一ならまだしも教室でプライドを捨ててまでするようなことじゃない。
もしからかっているならそろそろ答え合わせをしてくれなきゃおかしいし。
「そうなんだ、ジュース……」
はぁ、と溜息をつきつつ先程の天宮の言葉を反芻して、
「ってそれだーーー!!」
「ぅぇぇ?」
思い切り大声を出してしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 71