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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第23話 夢のような
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「んん……」
ゆっくりと、意識が現実へと引き戻されていく。
なんだかおかしな夢を見ていた気がする。
学校一の陰キャが学校一の不良に惚れられる、そんな話。
全くおかしなことだ。
「あ、起きた」
自嘲しながら目を開けると、目の前には天宮の顔があった。
……天宮?
「うわあああ!?」
「うわぁっ!」
驚きのあまり飛び上がると、どこか狭い場所に寝ていたのかはずみでずり落ちて何やら固い床を転がってしまった。
感触的に地面かもしれない。
「春くん、大丈夫!?」
「…………ははは」
少々頭をぶつけておかしくなってしまったようだ。目の前に天宮の姿が見える。
それで俺を春くんなんて呼んで、心配そうに見つめている。
なんだ、まだ夢の中か。
それなら、この頭の痛みも多分気の所為だろう。
「春くん、気絶しちゃったから……保健室ももう開いてなくて、家も分からないからとりあえず近くの公園で寝かせてたんだけど……」
「…………」
次第に意識を失う前の記憶が思い出されていく。
ああ、どうやら夢ではないらしい。
あれは紛れもなく現実で、今目の前にいる天宮も間違いなく本物だ。
観念するしかないようだ。ゆっくりと起き上がって一息ついて、そして。
「あれ……今何時!?」
大分覚醒してくると、今度は辺りが薄暗くなっていることに気づく。完全に暗くはないけど、もうかなり遅い時間になっているように見える。
まずい、親に何も連絡していない。今頃心配しているはずだ。
「今は18時半。カバンならここだよ」
「あ、ありがと……」
手際よく傍にあったカバンを渡され、大人しく受け取り中からスマホを取り出す。
両親からのメッセージを見ながらちらりと天宮の様子を窺うと、しゃがみこんでどこか嬉しそうにこちらを見ていた。
「っ……」
いたたまれなくなり目線を下げ、画面に集中する。心配するメッセージはきていたけど、まだ警察に通報されたりはしていないようだ。
急いで帰るとメッセージを返し、スマホをしまう。
改めて周りを見れば、確かに学校の近くにある公園のようだ。そこまで家との距離はないから、大丈夫だろう。
「あの、ありがと天宮……とりあえず俺帰るよ」
「うん」
立ち上がり、制服についた砂を払う。天宮は黙ってこちらを見つめている。
「あの……とりあえず立ったら?」
立ち上がろうとしない天宮を不審に思い、手を伸ばす。
すると、何やら顔を赤くして伏せられた。
「そ、その……足、痺れて」
「え」
なんで、と尋ねようとしてはたと気づく。
俺は状況的にベンチに寝かされていたわけだけど、目が覚めた時天宮の顔はすぐ目の前にあった。
そしてその時頭は何か柔らかいような硬いような微妙な何かの上に乗っていて、それから地面に転がり落ちたはずだ。
そして、痺れた天宮の足。
答えは一つしかない。
「もしかして……ずっと俺の頭乗せてた?」
「恥ずかしいな……せっかく膝枕してたのに痺れるとか、ダサすぎて」
「そんなわけ!」
思わず大声を出すと、びくっと天宮の方が震えた。
俺が気絶したのが恐らく17時半頃。そこからここまで俺を運んで、その上ずっと膝枕してくれていたのだ。
足が痺れても我慢して、挙句そのことを恥ずかしいとまで言ってのけて。
そんな……そんないじらしい事されたら、なんかすごい胸の奥がムズムズしてしまう。
「あの……ありがとう。迷惑かけてごめん」
とりあえず心を落ち着けて、頭を下げる。
「いや……迷惑とかは全然!」
……なんだろう。
慌ててなんでもなさそうに手を振る天宮がもう、読んで字のごとく恋する乙女にしか見えない。
今までは比喩としてだったけど、もうこれは本物だ。むしろ本物より恋してる。
俺には恋とか、よく分からないけれど。
「あの……天宮」
「?」
目線を合わせるために俺もしゃがみこみ、口を開く。
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