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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第25話 俺には君だけ
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扉を開けると、見慣れた金髪の青年が立っていた。
今日も今日とて傷だらけで、大きいカットバンまでしているのだから綺麗な顔が台無しだ。
「遅かったね?」
「別に、いつも通りだろ」
問いかけると、彼はどこか上の空で答えた。昨日は来てくれなかった分来てくれるだけでも嬉しいけど、実際いつもは一時間ほど早く来てくれるだけに少し残念だ。
と言ってもこういうことはたまにあって、理由は決まって喧嘩だ。きっといつも約束通りの時間に来ようとはしているのだろうだけど、それでも絡まれてしまってどうにもならない時は遅れてしまう。
喧嘩を止めたところで無駄だっていうのはもう分かっている。お小言ならともかく本気で止めてしまえば、彼は離れていくということも分かっている。
だから何も言わず、迎え入れる。彼にとってのただ一つの心の拠り所を、作るために。
「お前、いつも言ってるけどいい加減他の友達作れ。お前と一緒にいると俺が舐められる」
そう言いつつ、彼が心配しているのは俺自身のことだと知っている。自分のような不良と一緒にいれば、俺の評価も下がることを気にしているのだ。
そんなの周りがいくら気にしようと、俺は気にしていないのに。
本当に、優しいなあ。
「いつも言ってるけど、無理だよ。友達作るのって難しいから」
本当は違う。入学初日に話しかけてきた男は何人かいた。
心配するフリをした下心の見え透いた女に、「あいつといると危ないよ」としつこく声をかけられたこともあった。
けどその全部、自分の意思で突き放した。
「だからね────優。俺には優しかいないんだよ」
「……ったく。いつまでも子供だな、お前」
そうなんだよ。だから、優もいつまでも子供のままでいてね?
優には、俺しかいないんだから。
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