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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第27話 秘密
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せっかく帰りかけていた天宮が、不機嫌そうに振り返る。やっぱり俺以外への態度は何も変わっていないらしい。
けれどそれにも臆せず、沢田は意を決したように口を開いた。
「お前天宮……だよな?どういうことだよ?佐山とどういう関係なんだよ……?」
「……あ?」
「……」
こ、こいつ……
恐らくクラス全員が気になっているであろうことをド直球に聞いてきやがった……!
この前天宮と遭遇した時は情けなく逃げていったくせに、なんで今余計なこと聞くんだ。
天宮もどんどん不機嫌になっていって、このままだと手がつけられそうにない。
「さ、沢田……!あの、いろいろあって友達になっただけ……」
とにかくこの場を収めないと。変に刺激して暴れ始めても大変だ。
けど、俺の言葉をさえぎった天宮の返答は想像とは全く違ったものだった。
「春くんにとっては友達だけど、俺にとってはかけがえのない好きな人……かな」
「……」
「……」
終わった。別の意味で学校生活終わった。
昨日まではこの世からいなくなることにより終わったと思っていたけど、俺はこの先“天宮に惚れられた人”として恐れられて生きていくことになるかもしれない。
いや、ある意味それで落ち着いた日々が送れるならいいけど……それはこの惚れ薬状態の天宮がいる限り無理そうだ。
「は……好き……って。佐山のこと、が……?」
沢田は何やら異様にショックを受けている。パシリとして見下していた奴がそんな事になっていればこうもなるのだろうか。
俺にはよく分からないけど、まあ驚くのは分かる。俺も驚いてる。
まあ、理由はわかってる分周りよりはパニックになってないけど……説明するのもあれだしな。
いや、というか待て。考えてなかったけど、もし惚れ薬を治せたとして、正気に戻った天宮はこの状況大丈夫なんだろうか……?
俺みたいな奴に惚れてるという噂が流れてるなんて、屈辱以外の何物でもないはずだ。
と……止めないと。せめてこのクラスの人たちだけが知る秘密にしないと。じゃなきゃ殺られる……!
「あ、あああ天宮……!その話は内緒にしといてほしいんだけど……!」
昨日言っておけば良かった。昨日のあの態度の時点で周りに隠す気がないってことは分かってたけど!
あんな堂々と口に出すなんて思わなかった。
「なんで?だって事実だし」
「お、俺が恥ずかしいからさ……!」
まあ嘘はついてない。俺も恥ずかしい。
「そっか、じゃあ……」
天宮は再びこちらに歩み寄ると、突如ダンッ!と大きな音をさせて窓枠を殴りつけた。
それはもう、ヒビが入っていないのが不思議なくらいだ。
「今の話、言いふらした奴は……分かってるよな?」
「ひいいいいっ!」
背後で誰かが倒れる音がした。こちらに向けられたものではないけど、間近で見たおかげで俺も今にも倒れそうだ。
この人、殺気だけで人を殺せそう。ていうかすでに殺してるんじゃ?
「これでいい?」
けど……俺に向ける表情は、いつだって熱がこもっているのだ。天宮を利用するのはしのびないけど、戻った時の彼のためだ。
これで恐らく誰も言いふらすことはないだろう。
「うん……ありがとう」
「じゃあ、また昼休み。えっと……屋上で 」
そう言ったのも、恐らく人目につかないところを選んでのことだろう。あの不良が俺に惚れてて、俺にこうも気を遣ってるなんて……惚れ薬のせいとは言え、なんかすごいなと、改めて思った。
「……」
そして沢田は呆然とその様子を見ていたけど、それ以上何か言うこともなかった。
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