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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第56話 ヒント
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「ヤ……!?!?!?」
予想外の言葉に頭が沸騰してふらふらする。くすくすと面白そうに笑う神崎をまたも天宮が引き剥がした。
「駄目に決まってんだろそんなこと!!」
「なんでさ?君だってもう春くんとヤッたんだろ?どうせ一時の感情なんだし、元に戻ったらどうでもよくなるって」
「な……!ななななな」
なんだか盛大な勘違いをされている。いや、キスされたし襲われても不思議じゃないけど……!
誰でも分かるだろうけど────
俺、童貞だし。
そんな恐れ多いことできない。
「いや、俺と天宮は何も無いから……!」
「え……?君すごいね、ここまで天宮くんにゾッコンになられて無欲って……不能?」
「だから違うってーーー!!」
なんで青木と言い人を不能にしたがるんだ。俺は童貞なうえヘタレなだけで……自分で言ってて悲しくなってきた。
「てことは春くんは童貞処女ってわけだ!いいよいいよ、俺が教えてあげるから。どっちがいい?」
どっちというのはつまりドッチかということだろう。いや、そんなのどっちも嫌だわ!
「春くんに手出したら殺す!!」
「でもいいのかな?それじゃあ惚れ薬の解き方は一生分からないままだよ?」
「っ……」
「まあ、俺はどっちでもいいけどね」
「……」
確かにそうだ。こいつが本当のことを教えてくれる保証なんてどこにもないけど、何もしなければそれこそ変わらない。
「春くん……?それだけは駄目だ、俺は別に解けなくても……」
「確かに、俺は天宮を元に戻したい。こうなったのはやっぱり、俺の責任でもあるから。でも……
お前の言いなりになって戻したって、きっとこいつは喜ばない。元に戻ろうと、それだけは分かる。だから俺は、前の思い通りにはならない」
短い間だけど、接していて分かった。天宮は決して理不尽なことを強要したりするような悪い奴じゃない。……と、思う。
惚れ薬で性格まで変わっているようだけど、その根本はきっと変わっていないはずだ。
なら、俺がそんなことしてもきっと怒るのだろう。そうであってほしい、とも思う。少なくとも今の状態では喜ばないことだけは分かる。
「────っはははは!」
実はこう言うだけでもかなり怖かったわけだけど、神崎はさっきからの態度からも分かるようにお気に召したようだ。嬉しそうにまた笑い始める。
「いいよ、それでこそ俺が好きになった人だ……じゃあ特別にヒントをあげよう」
「?」
「一度、自分の気持ちと向き合ってみるといいよ。それだけだ」
そう言うと、今までのことなんてなかつまたみたいにくるりと踵を返し歩き始める。
「お、おい……!」
止めようとしたけどいつの間にか迎えらしき車が来ていて、
「また会おうね、春くん♡」
と手を振って行ってしまった。さすがに車ごと追いかけることはできず、それをただ見つめるしかない。
天宮が猫のように威嚇していたけど、それも通じていないようだった。
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