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「おはようございます!」
「あ、来たね壱君!
髪似合ってる」
「丸田さん!
今日からよろしくお願いします!」
「こちらこそ!」
ハハッと笑ったのは丸田徹平(まるたてっぺい)さん。
体力向上と筋力アップ、体を動かす事に慣れる為に今日からこの病院のリハビリルームで運動をしていく。
九条先生曰わく「適当に走られても怖いので、僕の目の届く所で運動をしてもらいます」だそうで、何だかんだ言って心配してくれてるのかなー‥なんて。
「まあ気構える必要も無いからね。やってみたいヤツがあったら言ってくれたらいいし、やり方とか回数とか様子見ながらやっていこう!」
「うん!」
「とりあえず準備運動しようか!」
リハビリルームと言ってもウォーキングマシンまで揃っているので走る事だって可能な訳で。オレのやる気はいい感じに向上心を蓄えていた。
この前の診察後、九条先生にリハビリルームに連れて来てもらって丸田さんとも挨拶をしたけどオレは九条先生よりも丸田さんとの付き合いが長い。
入院中、暇人のオレはよく病院内を歩き回っては色んな人と友達になった。何故かそれを許してくれていたじじ先生のおかげでオレは新人ナースよりもこの病院に詳しい。
この部屋を見つけた時、丸田さんは笑ってオレを迎えてくれた。また来てもいいか聞くとじゃあ次は壱君も何かしようかと言ったその言葉通り、丸田さんはオレに難しいパズルを用意してくれていて、そのパズルが完成するまでこの部屋に入り浸りだったっけ。
時には勉強、時にはリハビリのお手伝い。丸田さんには中々お世話になっているのだ。
「あっあれ、壱君髪染めたの?」
「あ、柏原さん!」
「後ろ姿だったから気付かなかった!中々似合ってるじゃない!
それで、調子はどう?」
「余裕ですよこのくらい」
「そう!思っていたより大丈夫そうね」
「なんでも、自分でストレッチとかしてたみたいですよ?体が柔らかくてびっくりしました」
「そ、そうなんですかっ」
順調にトレーニングを進めて暫くすると柏原さんが顔を出してくれた。
絶対来ると思ったんだ!
会話に入って来た丸田さんの声に少しだけおしとやかになった柏原さんはかれこれ五年は丸田さんにお熱だ。
柏原さんがまだ病院に来たての頃、オレを探し回って辿り着いたこの部屋で丸田さんに一目惚れ。この部屋に居たオレは柏原さんが丸田さんを好きになる瞬間を見てしまったけど、肝心の丸田さんは鈍感過ぎてお話にならない。
当時、彼女持ちだった丸田さんは数ヶ月後酷いフられ方をしたらしい。
目に見える程落ち込んだ丸田さんはその時献身的に支えた柏原さんと今ではいいお友達‥という程進んでもいない。
うーん、ここは少し進展させてあげたい。
「ねえ、丸田さん」
「なんだい?」
「カシワバラサンって長くない?しかも言いにくい」
「まあ、確かに少しだけ‥」
「オレ郁ちゃんって呼ぶ事にしたんだ!丸田さんも郁ちゃんって呼ぼうよ!」
「え?」
「い、壱君っ!」
「ねっ?」
キョトンとした丸田さんは30代半ばのクセに中々の爽やかボーイ。
柏原さん改め郁ちゃんは驚きと焦りで顔が赤くなっていた。
「柏原さんより郁ちゃんのが可愛いしっ」
「‥いや、しかし‥」
「壱君っ、丸田先生が困ってるでしょ!」
「一回だけ、呼んでみて!」
「いっ壱君!」
顔から火が出そうな程照れてたじろいでいる郁ちゃんを全無視して丸田さんを見詰める。
ここで折れたら意味がない!
「郁‥ちゃん?」
「っ!」
「いいじゃないですか!
それでいきましょうっ」
「あ‥いや、でも仕事上ちゃん付けだとマズいのでは‥」
「そうかなあ‥」
失敗‥か。
仕事場であまり馴れ馴れしいのはよろしくなかったのかもしれない。
「‥では、郁さんと言うのはどうでしょう」
シュンとしたオレを見かねてか真面目なのか、思い付いたと言いたげにニッコリと郁ちゃんを見る丸田さん。
今度は郁ちゃんがキョトンとしていた。
「‥あっ‥あの、はい」
俯く郁ちゃんにニコニコ顔の丸田さん。
中々お似合いなカップルになりそうだなあ、なんて!
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