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03 メガネくん -2
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コーヒーを飲み終え時計を見ると、1時間が経っていた。飲み終わってみると、いつも大体同じような時間の経過具合になっている。
結局今日は、美咲ともメガネくんとも会話の時間はほとんど取れなかった。別に今日が最後の来店というわけではないし、メガネくんとも改めて話せばいい。
俺は本を閉じて、バックにしまった。
俺の様子に気付いたメガネくんが、少し早足でこちらに向かってきた。
「千坂さん、今日は話したいことがあったんです」
「うん。そうだと思ってたよ。今日は忙しそうだから、また今度にしよう」
メガネくんは心底残念そうに「はい...」と項垂れた。そんなに話したかったのか。これも教師のサガなのか、彼の素直さがなんだか可愛く思えた。
「また、来てください」
「ああ。忙しいだろうけど頑張って」
前回もそうだったが、俺が頑張って、と言うとメガネくんはすごく嬉しそうにする。今日も黒縁メガネの奥で目を輝かせながら、店をあとにする俺を見送ってくれた。接客の途中だった美咲も、俺に目配せして、口パクで「ありがと」と笑いかけてくれた。
今日はやはり、子連れのファミリー層が多い。NOGIから図書館の出口までの間に、何組もの家族とすれ違った。教師をやっている手前、人の多い場所ほど教え子なり知人の存在が気になってしまう。この場所で出くわす事は滅多にないけれど、周りに視線を遣りながら、館内を歩いた。
そして誰にも会うことなく、俺は外に出た。
天を仰ぐと、雲ひとつない、青々とした空が、優しく広がっていた。
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