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第7章ー26 おれは泣き虫なんだ *
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田口がシャツをたくし上げて、そっと臍に舌を這わせると、保住は堪らないのか、声を上げた。
「や、やめろ! 銀太!」
くすぐったくて仕方がないということだろう。保住は身を捩るが、田口は離す気はない。保住の両腕を握ったままそっと彼を見上げた。
「くすぐったいですか?」
「はっ! ちょ、ちょっと! 本気で待て! ……ッ」
身体を捩って逃れようとする彼の腰を捕まえて引き寄せてから、脇腹も舌でなぞってみる。嫌がらせのつもりではないのだ。ただ、彼が面白そうに笑っているのが新鮮に見えたのだった。
「ふっ……銀太!」
あまりにも笑い転げる保住に、田口は苦笑した。
「保住さん……。笑いすぎですよ」
「だ、だって……っ。お前が悪い!!」
保住は涙を拭って肩で息をした。
「くすぐったいのと、痛いのと、気持ちいいのって似ている感覚なのでしょうか」
「は? なんの話だ」
目元の涙を拭う保住の隙を見て、そのまま、はだけたシャツの下から手を忍ばせて、彼の胸を撫であげる
「はっ……ッ……んっ」
お遊びみたいな行為だったのに。悪ふざけの延長だ。それなのに、こうして保住は田口に触れられる度にかわいい反応を見せるのだ。これは田口にしか見ることのできない彼の姿。田口が触れただけで、声が洩れるなんて。彼は期待してくれているのだ。これから起こることを。
「おい、こんなところで……」
「だからいいのでしょう? 保住さんは気がついていないかもしれませんけど」
「な、なにを……っ」
田口は不躾ではなく、そっと愛おしむかのように、保住のベルトを外してから衣類を外す。
「意外にベッドの上よりも、別なシチュエーションの時のほうが、いやらしい顔しています」
「は、はあ!? そ、それは……っ、お前の受け取り方だろうが……っッ!!」
田口に触れられて、身体はすっかり興奮気味だったらしい。先走りで濡れている保住を口に含む。
「銀太……ッ」
慌てて身体を起こそうとする保住なんてお構いなしだ。
「はっ……ッ、銀太……っ」
腹の痛みなど、どこかに行ってしまったかのようだ。ただ今は、保住を味わいたい。彼の体に触れさせてもらうたびに、田口は胸がいっぱいになる。幸せだと実感できるのだ。拒否的な言葉とは裏腹に、田口の触れたところは熱を帯び、口の中に彼の味が広がるのだ。
「や、……ダメだ……、はっ、はっ」
田口の口内は自分の熱と、保住の熱とが合わさり目眩がするくらいだった。舌先で丁寧に裏側を撫で上げる。保住の腰が震えるのがよくわかった。
自分の刺激で彼の思考を支配できるこの時が好きだ。保住は腰が引けているが、そんなことは許さないかのように、更に体を引き寄せてから奥深くまで咥え込んだ。
「はぅっ……、はあッ」
保住の瞼が痙攣している様は、まなめかしく見えた。田口は堪らずに口を離してから、彼に問う。
「気持ちいいですか? 保住さん」
恥ずかしくて仕方がないと言わんばかりに、保住は両手で顔を覆った。
「み、見るな」
お互い様であるはずなのに、恥じらうのか?
そう思うと、ますます田口の理性の箍は外れるだけだ。
「保住さんの顔が見たいです」
「や、ダメだ……っ」
田口はそっと、保住の両手を自分の手で握って外した。
「泣きそうじゃないですか」
「お、おれは泣き虫なんだっ」
「知っています」
そんなことは承知済みだ。保住とは、こうして何年も一緒にいると言うのに、毎回新しい気持ちになる。彼への想いは尽きることないのだ。「好き」「愛している」「大切だ」。そんな気持ちが、言葉にはなかなか出てはこないけれども、保住のその笑顔だけで、彼の気持ちが一気に流れ込んでくるのだ。
「我慢できません。すみません。こんなところで」
「銀太! 車の中は警察沙汰だ!」
「でも。少しだけです」
「少しって……お前……はぁっ」
怒っている保住が好きだ。怒っているくせに、それは照れ隠しだと言うことは理解していることだ。許してくれる。そんな甘えた気持ちのまま、保住の両手の指に絡ませて、自分のものを挿し込んだ。ぎゅっと握り返してくる反応は、彼の同意だと解釈する。両手を拘束してやると、隠すこともままならない。田口は保住を見据えられたまま、ゆっくりと保住の中を確かめるように、奥まで入り込んだ。
「保住さんの中が好きです」
「銀太……っ」
「中に入っただけでも気持ちがいいのに」
「銀太……っ、あ……っあん」
保住の目尻から流れ落ちる涙が「幸せだ」と言っているように見えた。
「こうして繋がっているだけで幸せです」
保住の中に入り込んでしまうと、余裕などあるわけがない。腸壁で刺激されただけで溢れてしまいそうだ。何方ともつかない拍動を感じながら、左手で保住のものを撫であげると、保住は悲鳴をあげた。
「やっ……ッ」
「イキそうです……っ」
「ぎ、銀太……っ」
お互いに、我を忘れそうなくらいの刺激に眩暈がする。保住は田口の首に腕を回してすがった。
「気持ち、いい……っ」
「保住さん……」
こんな場所でも、どこでも構わないのだ。
田口には保住がいればいい。
保住はどうだろうか? 問いかけても答えてはくれない気もするけれども、きっと同じ気持ちでいてくれているというのは自意識過剰か?
自嘲気味に口元を緩めた瞬間、田口の腰が大きく揺れた。絶頂を迎えたのだ。注ぎ込まれる精液は温かい。うねるようにドクドクという感覚を覚えた。すると、保住は「ふふ」っと軽く笑ったかと思うと、田口の肩を叩いた。
「だから! 多すぎ!」
「すみません……」
「こんな元気があるなら、病人扱いはしないからな……」
「保住さん」
「全く! 心配ばかりかけさせるな」
「すみません……」
なんだかバツが悪くて、しゅんとして、しょぼんとしていると、保住の細い腕が伸びてきて抱き寄せられた。
耳元に寄せられた唇から、ふとやさしい声が漏れ聞こえた。
「お前が側にいてくれて嬉しい」
田口は一瞬、目を見開き、それから保住の腰をぎゅっと抱きしめた。この恍惚感は言葉では言い表せないほどのこと。
「好きです。保住さん」
「馬鹿か。本当に」
「馬鹿でいいです。あなたがそばにいてくれさえすれば」
保住の匂い、感触に田口は癒される。腹の痛みなど、嘘のように引けていた。
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