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出会い
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俺達の出会いは病院だった。
中学の頃部活で脚をやってしまい、病院通いになっていた。
何度目かの検診の時、親だけ呼ばれてオレは待合室に居た…
〈………。〉
ただ何もする事が無く、ぼーっと音楽を聞き流していた。
すると、いつの間にか隣に誰かが座っていた。
横目で相手を盗み見てみる…
驚いた……あまり綺麗だとは言い難い服装をしている…
それだけでは無く、包帯の数が異常に多い。
〈ねぇ………〉
イヤホンを外し、隣の青年に話し掛ける。
返事は無くとも反応はしてくれた…
〈その怪我、どうしたの?〉
〘………?〙
喋らず、首を傾げるだけのこの子に違和感を覚える。
足をぷらぷらとさせて、今にも鼻歌でも歌いそうなほどだ…
〈えーっと………話せる?〉
〘うん!〙
ニッコリと笑うその子は、何故か小さい子の様にも見える…
まさかこの子…
〈君の名前は?〉
〘カイト!〙
〈カイト君か…何歳?〉
〘なん……んー…?〙
何歳……それすらも分からないのか…
両手を使って数を数えているカイト君…肩まで伸びた髪は金髪に染められているが、斑で不格好だ。
虐待……そしてネグレクト……か…
〈じゃあ、誕生日は?〉
〘誕生日……わかんない…僕、お父さんとお母さんと違うお家にずっと一人でいるから。〙
〈………。〉
違う家に……?
所々引っかかる所がある。
俺はまた別の質問をしようと口を開いた…が、後ろから女の金切り声が聞こえた。
〘あ!お母さんだ!〙
何故か俺は行かせたくなくって、カイト君の耳にイヤホンを刺した。
急な事でカイト君は驚いていたが、流れ出した童謡に直ぐ夢中になった。
«あの子はおかしいのよ!!何で施設に入れてくれないの!?!!»
〖…っですから!それは…〗
«何よ!!私の教育が悪いっていうの!!??!»
喚く女に対し、俺はただ嫌悪感を抱く事しかできなかった。
教育??
カイト君の喋り方で分かるだろ…
どう見たって教育もされてなければ育児もされてない。
〈糞かよ……〉
〘ねぇねぇ!なんにも無くなっちゃったよ!〙
〈ん?あぁ…じゃあ次は何聞こうか…?〉
〘これ!〙
〈ん、良いよ…じゃあ〉
«ちょっと!何やってんのよアンタ!!さっさと帰るわよ!!»
〘あ……〙
«ほんっとうにアンタは…!帰ったら覚悟しなさいよ…»
そう呟いた瞬間、カイト君の顔から笑顔が消えた。
嗚呼…怯えている…
それからは、病院に通う度カイトを探した。
当たり前の様にいつも居た…その度に安心した。
が、その分増えている包帯に嫌気が差した…
〈カイト。〉
〘はぁくん!〙
ここで会う少しの間、色々教えてあげた。
言葉の意味や音楽、絵の書き方…
全てが初めてなカイトは、教えてくれる俺にすぐ懐いた。
〈今日は何がしたい?〉
〘んー…〙
〖速水楓さーん、診察室へどうぞー。〗
〈あ…呼ばれたからちょっと待っててね、カイト。〉
〘うん!まってる!〙
ニッコリと笑うカイトの頭を撫で、診察室へ入った。
やっと動かせるようになった脚…部活にも参加出来るだろう…
そう思ってた…
〖…これからは激しい運動は控えた方が良いかと…〗
〈え………で、でもっ!俺!部活…!〉
〖言い辛いけど…〗
〈そ、んな……〉
死ぬ程頑張って、やっと手に入れたレギュラー。
それなのにこうも簡単に崩れた…
こんなにも努力したのに…力を発揮せずに夢は絶たれた。
神様なんて…
〘はぁくん??〙
〈カイト…〉
〘昨日ね、お外においてあった本にね、なんか…おくちとおくちを合わせてる人がね…〙
神様…
いや…
カイト……
俺は…
〈それ…キスって言うんだよ……〉
〘きす…?〙
〈こうしてたでしょ…〉
〘ん……っ〙
視界に広がる…
日に当たったカイトのキラキラと光った髪…
キスの意味が分からなくて、でも気持ち良さそうに目を瞑るカイトの顔…
可愛い……嗚呼……
ずっとこうしていたい…
«何してるの!!!?!!»
すぐ近くで鼓膜が破れる程五月蝿くて汚い音がした。
俺の腕の中で力無く凭れるカイトをそのままに、目線をその方向へ向ける。
そこにはカイトのお母さんが居た。
青い顔をして、何か怒鳴っているが…俺には届かない。
カイトと俺の世界に入って来ないで欲しい…嗚呼…
〈邪魔だな…〉
«ソレをこっちに寄越しなさい!!»
力強くカイトを引っ張るサングラスを掛けた男…
SP…とか?
笑わせるなぁ…それに、カイトを"ソレ"呼ばわりなんて。
物みたいに扱って…許せない。
«何よその目…気持ち悪い…»
〈アンタのその格好も年に合わなすぎて気持ち悪いッスよ。〉
«んな…っ!»
〈それに…カイト君あんたの息子でしょ?物じゃ無いんだけど。〉
睨むように見つめると、押し黙った。
そして何か吐き捨てて去って行った…
俺、間違った事言ってないんだけどなぁ…
そう思いながら俺も駐車場から立ち去る。
神様を見つけた…
けれど、その神様は汚い者達に縛り付けられている。
解放してあげなくっちゃ…
あの汚物達から…
でもどうやって解放してあげようか…
〈………。〉
嗚呼…簡単なことじゃないか…
殺してやろう…
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