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18歳以上ですか?
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金、持ってんじゃねぇか
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歯型のついた腕がピリピリと傷む。
「どーしてお前は飢えてんだ?」
「んー」
自分とほぼ変わらないくらいの体のサイズにひとまわり大きめのフードを深く被り、その内側から生えている一切手入れされていなそうなねずみ色のボサボサ髪。
その隙間から見える眼差しは
どこか遠くの空を眺めているように見えるし
すぐ目の前の何かを見つめているようにも見える。
「…おい、大丈夫か?」
「ーん 」
まだ、同じ方向を見たままだ
「なんか、お前のこと教えてくれよ、俺と同じくらいの歳に見えるけど俺よりも相当やばそうに見えるぞ」
「あ」
言葉が通じているのか?
「俺の言葉、わかる?」
彼の肩を掴みながら顔を覗き込む
無言で少しだけ頷いた。
「わかった、俺から話す
名前は海音幸太、16歳だ。仕事を探してるんだけど見つからなくって、とりあえず腹を満たすため動物を獲るために罠をかけてた。そしたらお前が引っかかってたってわけ」
「……ねこ…た?」
「猫、太?あ、名前?確かにそう聞こえるよな」
「ねこたって、いうんだね」
「それでもいいぜ、それでお前はなんて言うんだ?」
「…?」
しずかに首を傾げる
「名前だよ、お前の名前は?」
「わかんない」
「?…それは、どういうことだよ」
「おぼえてない」
様子がおかしい感じは最初からしていた。
動物引っ掛けるための罠に引っかかってるし、腕にかぶりつくし、やけにぼーっとしてるし…これは、
「……まさか、記憶喪失ってやつか?」
「…うん、そんなこと言ってた、ひーろーさんが」
「なんだ、ヒーローさん って」
「きのうまでいっしょにいたひと」
「そいつがお前の 保護者、か?」
「…?」
「まあいいや、記憶喪失ってんなら、そのヒーローさん の所に帰った方がいいんじゃないのか」
「ヒーローさんはいなくなっちゃった」
「それは…どういうことだよ」
「もういっしょにいちゃだめだから、って、ばいばいした」
「はぁ?わっけわかんねぇ、その状態のお前を1人、置き去りにしたってことか?許せねぇ、ぶん殴ってやる」
「だめだよ、ひーろーさんはぼくをたすけてくれたんだから」
しかし全然話が見えねぇ…お手上げだ
「 …まあ記憶がないんならしゃーないか、ごめん無理に話させようとして」
頭を傾げている。
謝罪されてる理由もわからないようだ。
そうだよな、記憶が無いってことは本当になんにもわかんないんだもんな。
難しいこと考えるのやめよう
頭使ったら腹減ってきた
今日の飯、どうしよ…
「きみ、おなかすいてるの?げんきない」
「あぁ、そうだよ、お前が食べちゃったからな」
「そうなんだ。ぼくもね、じつはお腹すいてるの」
「さっきの動物的行動見たら誰でもわかるよ」
罪の意識ゼロか
「ごはんたべようよ」
「できたらとっくにそうしてる」
「ぼく、たべかたわかんないんだ」
「…食べ方まで忘れちまうのか、記憶喪失ってのは」
そりゃー動物的なかぶりつき方になってしまうのも頷ける。
本能のままに食事をすると人間でもああなってしまうのだな、ひとつ学んだよ、ありがとう。
「これでおいしいもの たべろって、でもこれどうやってたべたらおいしいんだろ…ぜんぜんおいしくない」
そう言いながらピーマンを口に入れてしまった子供のようにべーと吐き出していたのは札束である。
札束。
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