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放課後を告げるチャイムは他のものと違いは無いのにどこか楽しげに響く気がする。SHRもそうそうに下校となった。
これから部活だと渋い顔をする友人に部活に所属していない遥は別れを告げ、さっさと教室を出た。
向かう先は北棟にある自習室だ。遥はよくそこに通っている。
北棟は使われていない教室が立ち並ぶため仄暗く、ここを歩く生徒や教師の姿は滅多にない。人混みがあまり得意ではない遥はそれを気に入っている。
目的の教室の扉に手をかけた時、足音が聞こえた。
南棟から聞こえるものとは違う、北棟の奥からの足音。
南棟には自習室も図書室もあるのに、わざわざ黴臭い北棟の自習室を利用する生徒は、混み合うはずの定期テスト前でも見たことがない。
ましてや北棟の奥なんて遥も何の教室があるのか知らない。
ほとんど無意識に気になって振り返ると、北棟の奥から出てきたのは全校集会の後に背中を見かけてからずっと姿を見なかった藤田だった。
すれ違い様にお互いの視線が交わる。
珍しいね、どうしたの? ずっとそこに居たの?
いくらでも話しかける言葉は見つかるのに、遥の口は重く閉ざされたまま、すれ違って行った。
あまりに彼の視線が冷たかったのだ。
不機嫌、にも近い感情の無い表情だった。
元来彼の表情は乏しい。人と話している姿をあまり見かけないせいもあるかもしれないが、それでも豊かとは言えないはずだ。
そう思えばいつもと同じなのかもしれない。
けれど気のせいだろうか、遥には何故か傷ついた表情を押し殺しているように見えたのだった。
しばらく自習室に篭っていると、廊下側の窓越しに全校集会で司会をしていた教師が北棟の廊下を歩いて行ったのが見えた。
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