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その後、一駅分藤田と同じ帰路を辿る遥は、落ち着きを取り戻した彼を支えるようにして帰った。
その頃には最終下校のチャイムはとっくに鳴り終わっていた。先生に見つかれば何故帰っていないのかと問い詰められてしまう。藤田はそれを酷く嫌がったので仕方なく足音を殺し、閉まった正門を避けて裏門から校舎を後にした。
タクシーを呼ぼうかと提案したが、彼は青い顔のままかぶりを振るだけだった。ならばせめて家まで送ると申し出たが、やはりそれも却下されてしまった。
何故そこまでして構われるのを嫌がるのか、遥には皆目見当もつかない。具合が悪いのなら頼ればいいのに。放って置けばいいものを、彼の瞳はどこか寂しそうで、救いを求めているように思えてしまい、そうはいかないと直感した遥の身にもなって欲しいものだ。
謎多き成績優秀で孤高の風紀委員様のプライドがそれを邪魔するのだろうか。弱みを見せたく無い気持ちもわからんでもない気もするが釈然としない。
ただ、遥はひとつ発見してしまったのだった。
それは藤田の制服と髪を整え、散らばっていた荷物も拾い上げてやり、さて帰ろうと立ち上がらせた時だった。
上手く脚に力が入らなかったのか、よろけてしなだれかかってきた藤田の体勢を持ち直してあげようとして肩を支えて気づいてしまった。普段、毅然とした態度で校則違反している生徒を注意している彼の右耳。
我が校では開けることすら禁止されているピアスホールがふたつ、あった。
彼は周りに思われているような人間とは少し、違うのかもしれない。
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