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約束
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今日も補習、明日も補習、明後日も明々後日もその次の日も補習。
でも篠村は文句一つ言わずに今日も補習を受けていた。
でも今日は少し大人し過ぎる。どうかしたのだろうか。
補習初日も最初は大人しかったが、あれは大人しいというより挙動不審といった表現の方が正しく、確かその日はすぐに中断された。
しかし、今思うと昨日の補習が終わる頃にはすでに大人しかった気がする。
そして俺が色々と考えていると、
「・・・なぁ、小林」
と、不意打ちに話しかけてきたので、
「ど、どうした」
と、少し裏返った声がでてしまった。
しんとしている教室の中でその声は結構響き、地味に恥ずかしかった。
でも篠村はそれをスルーしてくれたのか、または気づいていないのか、どちらなのかはわからなかったが何も言わない篠村に俺は心から感謝した。
しかし空気は重く、いっそのこと明るく突っ込んでくれていた方が俺は救われていたかもしれない。
そして篠村はこの重い空気の中、小さく口を開いた。
「・・・昨日は、ごめん」
「へっ?」
また気の抜けた声が。死にてぇ。
でも篠村は一体何を謝っているのか。
結局答えは出ず、俺は篠村に質問した。
「・・・何のことだ?」
そう聞くと篠村はまた黙り込んだ。
別に怒ってないから!ちょっと聞いただけだから!
だから頼む、答えてくれ。
そしてこの重い空気をどうにかしてくれ。
篠村は言いづらそうに答えた。
「・・・昨日、わがまま言ったりして・・・」
「え・・・」
なんだ、そんなことか。
心配して損した。
「・・・そんなこと気にしてたのか」「・・・・・・・・」
篠村は何も言わない。
「別に、お前のわがままは今に始まったことじゃないだろ」
「う・・・」
「それに、いつものお前ならいちいちそんなこと気にしねぇじゃん。なのにどうしたんだよ」
「・・・・・・・・」
篠村はまた黙り込んだが、観念したのか俺の方をちらっと見て、
「その、昨日、怒ってるように見えて・・・」
「?誰が」
「っ・・・あんた怒ってたじゃん昨日!」
「・・・はあ?別に珍しいことじゃないだろ」
あーあ、認めちゃったよ。普段からいつも怒っていると。
昔はそんなんじゃなかったのにな。
「でも、昨日は結構まじだった、からっ・・・」
「・・・・・・・・」
顔に出ていたのだろうか。
でも別に本気で怒っていた訳ではない。
ただ、心の底から面倒くさいと思っただけだ。
つまりこいつは、面倒くさいと思った俺を怒っていると判断したようだ。
そう思うと急に篠村が可愛く思えた。
「・・・何だよ」
「・・・いや、別に」
「っ・・・何か文句あるなら言えよ!」
「うーん、そうだな・・・少しでも悪いと思うなら、今回の期末考査で良い結果を出してくれ」
そう言うと篠村はほっとしたのか小さな声で、
「・・・努力は、する」
と答え、俺はそっか、と答えた。
「なぁ、小林」
「ん?」
「じゃあさ、もし良い結果取ったらさ、その日の放課後、ちょっと空けといてくんね?」
「・・・?あぁ、わかった」
よくわからなかったが、放課後空けるくらい何ら問題なかったので篠村と絶対なっ、と約束した。
やっぱりこいつは笑顔が一番だな、と俺はそう思った。
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