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αとΩ
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恋人がいる。
そいつの名前は志貴。
幼馴染で、俺と同じα。
そして唯一俺が敵わない相手だ。
俺達は昔から、それこそ第二の性の判明前から、
勉強にしろ運動にしろ、いつでもトップ1,2独占だった。
周りの奴らの想像通り、俺と志貴は当然αだったし、
それを疑問に思う人間なんてどこにも居やしなかった。
会話のレベルからして俺達についてこれる奴なんて全く居なくて、
志貴と話すときがこの世で一番充実した時間でもあったのだ。
勿論それは志貴も同じ。
低レベルな番なんかを作るよりずっと良い。
俺たちが付き合いだしたのは性判明の翌日だった。
───幼い頃、曖昧な知識でΩの男を殺したことがある。
第二の性判明後、俺達αと番いたいがために
Ωはわんさか湧いてきた。
同級生だけに留まらず、
先輩だったり顔も見たことのない別の学校の奴もいた。
その殆どは、体力も学力もない
俺達からしてみればクズばかりで、
面倒ではあったが、蹴散らすのにそこまで苦労はしなかった。
だが、ただ一人、いつまでも俺達…
いや、正確には志貴に縋りついて来る、汚いΩがいたんだ。
名前も忘れたそいつは、αの親から虐待、
クラスからは虐めを受けて
毎日顔や身体に真新しい傷を作ってくる、
ボロ雑巾みたいな気持ち悪い奴だった。
特に頬だ。
刃物で切られたような大きな傷は、
見るだけで吐き気がする。
「僕を番にしてくださいっ…、何でもします!」
涙目で訴え続けるそのΩに、
志貴がすごく嫌そうな顔をしていたのをよく覚えている。
それもそうだ。
俺以外の奴らとなんて口もききたがらない生粋のαである志貴の足元に、毎日毎日何度も手をついて、
そんなふざげたことを言いに来るのだから。
そもそも俺という恋人がいる志貴にそんな事を言ったところで無駄なのに。
こうなる事を予想もした上で俺たちは幼馴染から恋人へと関係を変えたというのに。
常日頃からΩは頭の悪い奴だと思ってはいたけれど、
性別どうこうの前に人としての常識すらなってないようじゃ
それこそ生きてる価値なんてないんじゃないだろうか。
バカにすんのも大概にしとけよ。
怒り…勿論それが一番大きな理由ではあったが、
この行為の裏には俺なりの牽制、
そして認めたくはないが、こんなΩに対する嫉妬やら志貴との関係を邪魔されたくないという独占欲、
執着心にも似た感情があったのかもしれない。
俺はそいつの首を噛んだ。
その意味も知らないで、
その行為の重さも知らないで。
「な、で…なんでですか、なんで…僕を噛むんですか…っ?!」
「なんで…?決まってんだろ、しつこいからだよ。」
生まれて初めてΩに刃向われたあの日の苛立ちは
相当なものだった。
βだけじゃない。
同級生のαすら従えていた俺にとって、
少し叩けば壊れてしまうほどにか弱そうなゴミの鋭い視線に沸き立つ怒りはその日一日だけでは収まるはずがなかった。
性行中にそこを噛むことで番が成立することは
学校でも習ったし生きていれば知り得る知識。
別にセックスをした訳でもないし、
正しく番えた訳でもないんだから
何故そんなに俺を睨みつけるのか、
理解が出来なかった。
その日から、そいつは授業中でも放課後でも
俺に熱のこもった視線を送るようになった。
それが面倒で、俺の言うことを何でも聞く奴らに
好き放題させた事もある。
その結果、そいつは学校に来なくなって、
噂で知った事だがーー…死んだらしい。
大人達は誰も俺を責めなかったし、それが当たり前だった。
俺達にしつこく付き纏ったΩがいけない。
俺はまだしっかりと性の勉強をしていなかったのだから、仕方ない。
当時の大人たちの言い分に、子供ながら確実に
俺達と、それ以外との価値の違いに気付かされた。
だから俺は、20歳を過ぎた今でもΩなんかと番うつもりは全く無いし、志貴と2人で生きて行こうと思っている。
いや、思って“いた”。
世界は変わってしまった。
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