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事件と変化
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Ωによる逆襲──世間は大きくその事件に注目した。
αは恐怖に怯えるようになり、
逆にΩはこれまで受けて来た非道な扱いをαに行うようになり、
世界は変わってしまったのだ。
βは強い者に従い、当たり前のように手のひらを返す。
世のカーストは真逆になった。
Ω至上主義の世界。
αが実権を握るような大手会社では次々とΩによるテロ事件が起こるようになった。
例えαがどんなに強い力を持っていようとも、
複数人に囲まれてしまえば勝ち目はないわけで。
志貴を失い、孤独になった俺は
これまで何度もΩに襲われかけた。
今日もこれから意識の戻らない志貴の見舞いに行かなければならなくて、
人通りのない細い道を慎重に歩く。
全部……アイツのせいだと思いたいのに…っ。
俺のせいじゃない…そう言うには失い過ぎた。
地位、名誉、そしてこの先意識が戻るかも分からない志貴という大切な存在。
今日も、震える足で独り、志貴の待つ病室へ向かう。
それが志貴への償いだった。
と、
「あれー?こんな所でα様が何してるんですかー?」
「っ、な!」
普段、人なんて滅多に通らないこんな路地裏で、
Ωの男が5人────。
見つかってしまった。
逃げ場は……無い。
例えここを振り切って大通りに出られたとて、
このご時世俺みたいな孤独のαを匿ってくれるような変わり者は居ない。
じわりじわりと迫ってくるΩ達の手には頑丈そうなロープとガムテープ。
…くそ、ここまでか。
「ほぉらα様(笑)の大好きなΩが沢山ですよー嬉しいですかぁ?」
「は、なせっ、おい!…んぐっ!」
「ま、こーやって羽交い締めにされて?口もガムテで封じられちゃったらいっくら力に自信のあるαでも太刀打ち出来ないんだろうけ…どっ!」
「かハッ!」
先の尖った靴で腹部を蹴り挙げられ、
吐き出した吐瀉物に血が混じる。
ニヤニヤと薄気味悪く笑うΩ達の表情は涙でぼやけた。
痛みとか、そんな直接的なもんじゃない。
こんな自分が惨めで、悔しくて、
過去の自分を責めた。
これまで幾度となく侮辱し、
汚物のように扱ってきたΩにこうして痛ぶられる俺が、
すごくすごく惨めだった。
その時、後ろから誰か走ってくる足音が聞こえた。
既に意識は絶え絶え、Ω達が少しも恐れていない様を見ると……
きっと、足音の主もΩなんだろう。
もういい、何とでもしてくれよ。
俺なんて、生きてる価値ねえよ。
「っ、じゅんさん、じゅんさんしっかり!
僕の家すぐそこだから…ほら、動いて!」
…?
この声…
それにどこか血がざわめくような感覚…まさか。
どうして。
「…こ、こいつもしかして…!」
「頬の傷…間違いない!逃げろ!」
Ω達は途端に顔色を変え、
俺を縛り付けたロープや何かも放り捨てて走っていってしまった。
俺にはそれを追うだけの体力も、気力も残っていない。
「……んで、お前が俺を助けるんだ…。」
フードの下の瞳は、何故か辛そうに見えた。
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