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世界の終わりか始まりか
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Side.志貴-1
扉の向こうに気配を感じた。
会話までは聞き取れなかったけれど、恐らく2人。
うち1人の声はすぐに分かった。
いつも一緒にいた、いつも隣に居た、唯一の存在。
「志貴。入るよ。」
「…じゅん。」
「目、覚めたって聞いたから…。調子どうだ?」
「うん、だいぶ良いよ。」
久しぶりに聞くじゅんの声は
何とも胸を締め付けるものがあった。
久しぶり、といっても…俺がずっと眠っていただけなのだけど。
「そっか。…よかった。」
ベッドの隣に椅子を移動させるじゅんに違和感を覚えたのはその時だ。
慣れない匂い。
いや、慣れない為に、近づくのを拒んでいたと言った方が正しいか。
じゅんからは、Ωの匂いがした。
「こんなタイミングでさ…、俺、
志貴に話したいことがあるんだ。」
どうしてそんなに哀しく笑うんだ。
「どうしても、伝えたくて…。」
俺はそんな顔したじゅんと話したい事なんて何もないよ。
「俺さ、志貴。」
身体はまるで言うことを聞かず、
嫌に冷たい汗と、それから早まる心拍。
澄ました顔で
「急にどうした」と
笑いながら言ってやれる強さと余裕が欲しかった。
身体が弱っているせいだろうか。
うまく言葉が出ない。
代わりに、心の奥では決して口にする事のない
俺の中の弱い部分がずっと叫んでいる。
やだよ。
俺を置いてどこかにいかないで。
俺がじゅんを導くから、
俺がじゅんの先を行くから――
「志貴が好きだよ。愛してる。」
「…え?」
じゅんの放った言葉は、俺が想像していたこととは真逆だった。
「志貴が居たから、今までやってこれた。
志貴と一緒に居た時間は俺の宝物。」
「……。」
じゅんの唇は微かに震えていて、
でも今までに見たことがないくらい強くて真っ直ぐな瞳をしている。
ぽろりと、無意識に涙がこぼれていた。
じゅんは、今の俺をどんなふうに映しているんだろう。
その好きは、
その愛は、
一体どんな意味を含んでいるんだろう。
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