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愛というもの
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Side.夏咲-1
じゅんさんは、僕の耳元で囁いた。
「夏咲に…愛を教えてあげる。」
その言葉の意味を解釈するより前に、
耳元で感じた吐息、好きで好きで仕方なかった声色、匂い、
その全てを感じさせるじゅんさんという存在に震えた。
浅はかな僕の身体は、それだけで熱を帯びる。
Ωの自分が嫌いだった。
幼い頃から人より劣る学力と体力で、
初めて見放されたのは父親だった。
それもそうだ。
周りから慕われるαであり、大きな病院を取り仕切る立場でありながら、
番ったΩは僕を産み落として死んだ。
それなのに唯一の希望であった僕すら、
僕を産んだ方の父親の血を受け継いでΩ性だったなんて。
性別判明後、父にどれだけ謝ったか分からない。
…本当はわかってた。
僕がじゅんさんに噛まれてから必死に薬を投与し続けてくれたのは、
父としての愛なんかじゃなく、周りの人間からの信頼を落とさないためだと。
番に捨てられたΩの息子を生かせて守ったという実績が…
ヤサシイ医師としての立場が欲しかったのだと。
それでもよかった。
僕は父に生かされた、それは紛れもない事実。
そこに愛がなかったとて、僕はそれを愛に置き換えることが出来た。
親に捨てられるΩなんて山ほどいる中で、
僕は助けて貰えたその事実だけは、確かに存在するものだから。
気付かないふりをしていたそれを、
じゅんさんは教えてくれると言ってくれた。
僕の歪んだ恋愛感情に巻き込まれた被害者でありながら、
そんな優しい言葉をくれた。
僕を抱いたのは、Ωを恐れたか、
志貴さんを危険な目に遭わせた僕への復讐だと思っていた。
変わってしまったこの世界で、
Ωの僕を利用し、いつかまたΩを疎む世界に戻ってしまった暁には
再び捨てられるのだと思っていた。
だけどそれは違うと……そう言って貰えたような気がして。
じんわりと固く凍りついた心を、奥の奥から温めて、
溶かしてくれているような不思議な感覚。
じゅんさんを好きになったことに、
罪悪感はあれど後悔は1度もしたことが無い。
じゅんさん、好きです。
大好きです、何よりも。
……これは、愛とは違いますか?
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