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4※ 性描写あり
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不意に背中が何か柔らかいものに包まれた。
ベッド……? それも、信じられないほど上質なものに横たえられたようだ。
驚いて男の方を見ると、なんと上着を脱ぎ始めている。
意味が分からなくて何も言えないでいるうちに、鍛え上げた上半身が露わになる。
ごくり、と生唾を飲み込んでしまった自分に戸惑う。これじゃまるで何かを期待しているみたいじゃないか。
「ちょ、おいっ。あんた何脱いでるんだ!?」
「シャツですが……」
「この後に及んでそういうふざけたことを言うのはやめろ! なぜ脱いでるっ」
「……『あんた』って呼ぶのはやめてください。俺は、ティヘラス・シザ……ティヘラスと呼んで」
黒髪の男——ティヘラスは荒い息の下からそう言った。
ぞわ、と腰骨の中心から震えがのぼってくる。
変だ。
僕はこの男に触れたくてたまらない……
ティヘラスがベッドに上がってくる。
「やめろ……来るなよ」
そんな弱々しい制止はむしろ、ティヘラスにとって誘いに等しいものだったかもしれない。
奴は熱に浮かされた表情で僕の髪を触った。
だめだ。拒まなきゃ、何をされるかわからない……。
何の了承もなしに唇が吸われる。
「あなたの名は……?」
唇と唇がギリギリ触れるかどうかの距離で、ティヘラスが囁く。
もどかしくて心地良くて、訳がわからない。
熱に浮かされたように答えてしまう。
「フィ、ル……」
「フィル、ですか? なんて素敵な名前」
称賛とともに口付けがいくつも降ってくる。
もう、いつの間にか「そういうこと」をする雰囲気になってる。
しかも、こちらが抱かれる方……
(僕、そんなふしだらな奴だったのか? 初めて会ったばかりの人間とこんな……)
気づけば舌を絡めて、お互いの身体を手で探り合っている。
触れるところ全てが気持ちいい。
複雑な思考が次々泡のように破れて消えていく。
滅亡も、病のことも、本のことも、——司書の友人のことも。
大きな手がゆっくりと肌を滑っていって、僕の下腹部に届いた。
「やめろっ」
奴の腹を思い切り足で蹴飛ばす。
ベッドは大きくて、奴が転がってもまだ床に落下しない。
今度はこちらが逆にマウントをとった。
体格差があっても、膝で鎖骨のあたりを押さえると、簡単には抜け出せない。
奴が端正な顔を性的衝動に歪めて、懇願する。
「ああフィル、お願い……続きを」
「……なってないなあ」
ああ、僕自身も、この街の人間の狂気に当てられたのだろうか?
「お願いします、だろう?」
身体の中心の昂りを持て余して、ティヘラスが無様に腰を擦り付けてくる。
お仕置きとばかりに、膝に体重を乗せると、呻きがあがった。
「お、お願い……します」
「おまえ、最初は親切なふりして僕に近寄ってきたくせに、こんなところに連れ込んで襲いかかるとはずいぶん躾が行き届いているじゃないか」
「も、申し訳ありません……あなたが、その……くらくらする匂いがして、あまりに綺麗だったから」
「匂いや顔が好みなら人を襲うのか? 見境のないけだものめ」
「ち、違っ……ごめんなさいっ……」
立場が弱いのは法を犯している僕の方なのに、神妙に謝るティヘラスが滑稽だ。
「どうしても僕とやりたいっていうなら、態度で示してみなよ」
顎のラインを指でなぞると、ティヘラスは恍惚の表情を浮かべた。
マウントポジションを解除してやる。
ティヘラスは手を背後に回して組み、脚を広げて膝立ちになり、更に少し反った体勢になってみせた。
“私にはあなたを傷つけることはできません”と言っているかのよう。
確かにこれなら文字通り手も足も出せないだろう。
全面降伏を態度に出しつつ、こちらが安全に行為が出来るというアピール。
そこまでして僕としたいのか。
自分より身体が大きくて力も強そうな男が、セックスの代償にと、なぜか僕に対して従順になっている。
こんな魅力的な奴を従えている事実に、どうしようもなく興奮する。
この街の人間はおかしい。
でも、それよりおかしいのは、この男の態度が満更いやでもない僕のほうだ。
「はは、すごい格好……」
普段はこんな色情狂みたいなことしないのに……今はこの男を屈服させることに無常の喜びを感じる。
「……初めてなんです、こんな気持ち」
ティヘラスが何か言うのを無視して、後ろに回した手を手近な布で縛る。
いくら従順な奴でも、この体格と筋力ではひっくり返されてしまうかもしれない。
「雷が落ちたような衝撃で……絶対にあなたを俺のものにしたいと」
「『俺のもの』? 傲慢だな」
「でっ、でも今は……あなたのものになりたいと、思ってます……」
なにそれ。
不覚にも、今のはときめいた。
出会って間もない人間に、そこまで血道を上げるのか?
しらふの時に聞いたらなんて大仰な口説き文句かと白けてしまうだろう。
でも、なぜか僕にはそれが、真に迫る告白だと感じられた。
あるいはさっきから僕を追い立てるこの疼きのせいかもしれないけれど。もう知るものか。
「いいよ……今はその与太話に付き合ってあげる。そのかわり、いいというまで動くなよ」
トンと胸を押して、仰向けに倒す。
期待とじれったさでうるんだ瞳が僕を見上げてくる。
行きずりみたいな初体験なんて、全然ロマンチックじゃない。
でも、喉が渇くみたいに、こいつを味わいたくて仕方がなかった。
張り詰めた前をくつろげてやると、予想より立派なモノがついていた。
(う……痛そう。焼け石に水かもだけど唾液で濡らしとくか)
唾液を含んだ口でそれを丹念に濡らしていく。
ひときわ大きくティヘラスが喘いだ。
「ふぃ、フィル……そんなことされたら……っ」
「うるさいな、僕の方が痛い思いをするかもしれないんだからこれくらい我慢しろ」
「そ、そうではなくて……あぁあっ」
ふう。とりあえず全体的に唾液でべとべとにして滑りをよくしてみた。
どれほど効果があるのかはわからないけど……。
凶悪なサイズのそれを後ろの穴にあてがって、恐る恐る迎え入れる。
使ったこともないのになぜか滑りはよくて、心配していた痛みもさほどない。
それどころか、これは、なかなか……
腰を深く落としてみたり、ぐりぐりとこすり付けてみたりして、僕はすぐ新しい快楽を使いこなした。
出し入れするたび、雁首のところが内壁に引っかかってこすれるのが気持ちいい。
この体勢だとキスができないけど、快感に耐える彼の表情がよく見える。
ティヘラスの奴は乱れながらも動くなという命令を健気に守っている。が、本能的なものなのか、徐々に腰がベッドから浮いてきていた。
「何動こうとしてる?」
「ぅああっ、ご、ごめんなさっ……」
搾るように締め上げると、ティヘラスが喉を反らせてかすれた甘い声を上げる。
呼吸のたびに、筋肉質な胸が大きく上下して、彼の快感の強さを思わせた。
思うに任せて動いていると、美丈夫の彼からは想像できないほど、初々しい喘ぎが漏れ聞こえる。
「見かけに寄らず可愛い声してるな」
「う……言わないで……っ」
後ろ手に縛っているので、羞恥に染まる顔を覆い隠すこともできない。
でも、それはそれで、ティヘラスは喜んでいるように見える。
これではどちらが攻め手なのだかわかりゃしない。
もっとよく顔を観察してやろうと、顔を近づけ——
「痛っ……!?」
鮮烈な痛みの後に、恐怖が襲ってくる。
ティヘラスが僕の喉元に噛み付いていた。
(痛いっ……犬歯っ、あ、喉が、食われ)
歯列が首の皮膚に強く食い込む……同時に、中のモノが大きく脈打って、下腹部に生温かいものがじんわりと広がった。そのままどくどくと、注がれ続ける。
ティヘラスの力が抜けて、喉元に食らいついていた歯が離れる。
死ぬかと思った。
喉元を撫でるとくっきりと歯形が残っているのがわかる。
出血していないことに安堵しつつ、命令を破ったティヘラスをじろりと睨む。
僕に見下ろされているのが嬉しいのか、目を離そうとしない。
「おい」
「あぁ! 許し……っ、ごめんなさいぃっ」
お返しとばかりに乳首を思い切りひねりあげる。
痛がると思っていたらなぜか喜んでいて、なんだかしゃくだ。
「僕、まだイッてないんだけど」
涙とよだれでぐしゃぐしゃになった端正な顔が、小動物のように怯える。
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