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3.海
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「雨依、美味しいか?」
「はい。遥」
(今日は遥と海に来ました。)
「それはよかった。」
遥は僕の隣に腰掛けながら、レモン味のかき氷を食べているようです。僕は遥の買ってくれたトロピカルジュースなるものを飲んでいます。とても美味です。
「さて、この後はここの近くのホテルにでも泊まろう。結構豪華らしいぞ」
ふ、と薄く笑む遥に僕は首を傾げ疑問に持ちます。
「遥、ホテルや旅館に泊まることは滅多にないです。お金がとてもかかるといつも言っています」
「ぐ、…まあそうなんだけどさぁ」
頭を掻く遥。
「だけど、もうすぐお前の誕生日だろう。」
「え?」
「だったら、これくらいのことしても良いかと思ってさ」
僕を見て遥は唇をほんの少し上にあげます。相変わらず遥は、感情の動きが少なく表情が薄いです。だからいつも僕は、遥の些細な表情を見逃さないように遥のことを常に見ているのです。
「少し泳ぐか?」
下に海パンを履いて上にパーカーを着た遥が立ち上がり言います。
「遥、僕もですが何故パーカーを着たまま泳ぐのでしょうか?周りの男は皆上半身裸です」
「え?ああこれは、焼けるとめっちゃ痛いんだよ、だから。」
「焼ける。」
「そう。太陽の熱でね。俺昔から肌が真っ赤になって火傷みたいになるからさ裸になれないんだよ。雨依はわかんないけど…お前も相当肌白いし俺と同じなんじゃないかと思ってさ」
軽く準備体操をしながら遥は言いました。なるほど、パーカーを着ているのはそういう意味だったのですね。遥はいつも僕のことを考えてくれています。
「遥、ありがとう。」
「えっ、いや、お礼言われるまでのことはしてないけど…」
遥は少し困っているようです。
「それにしても雨依はすごいな」
「?はい」
どこか苦笑いして遥は僕を見ています。
「気づかないか?女の子だけじゃなく男の目までもが雨依のことを見てる。その透き通った珍しい青い瞳と綺麗な金髪が人の目をひきつけるんだろうけど、何よりお前、顔の造りもいいから。」
誰も俺がまさか親だなんて思いもしないんだろうな、そう言う遥の表情は少し切なげです。
「僕は遥しか見ていません」
「えっ」
「周りがどう思おうと僕は遥以外に興味を示しません。遥は僕にとって命を救ってくれた存在でありここまで育ててくれた恩人です。遥が右にならえと言えば僕はそれに背くことは決してありません。」
「…雨依」
「…」
「嬉しいことを言ってくれているのは分かるんだけど、それなんかちょっと子どもが親に対する発言とは何か違う気が…」
遥は愛想笑いをしているようです。
(はて。もしや僕は何か間違ったことを言ったのでしょうか?)
「ここが部屋だって。雨依」
遥がひとつの部屋の前のドアを開けて中に入りながら言いました。
「広めの部屋ですね」
「そうなんだよ、実は俺もこんなホテルに泊まるの人生初めてで」
遥はそう言いながら大きな窓に手をついて外の景色を眺めているようです。
「綺麗ですか?」
いつも落ち着いた遥の行動でない、少し浮き足立った遥の珍しい行動に思わずふ、と自然と笑みが零れます。
「うわっ!」
「どうしたんですか?」
背の高さ的に必然的に上を見上げるような形を遥が取りながら僕を見て言いました。
「い、いつの間に近くに、雨依」
「近くに来たら駄目でしょうか?」
「いやそうじゃなくてっ!…手っ!この手はなんだ!」
「手?」
遥は自分にとって右側にある窓をついている僕の右手に関して怒っているようです。はて、何故?
「何が駄目なのでしょう?何故怒っているのですか?」
すると遥は少々頬を赤くしながら眉を寄せて僕を見てきます。
「恋人じゃないんだからっっ、まるで俺の体を後ろから包むみたいにしてわざわざ窓に手をつくのをやめろと言ってるんだっっ!」
包む?
「すみません。別にわざとでは無かったのですが、遥は小さく可愛らしいサイズだったのでつい、このような体勢を無意識に取ってしまったのかもしれません。不快にさせたのでしたら申し訳ありません。」
手を窓から離し遥に向き直って頭を軽く下げて謝ると、可愛らしいって…と遥の声が耳に聞こえました。
「俺はお前の親なんだから、こういう変なことするのも変なこと言うのも今後やめろよ」
遥は頬をうっすら赤に染めながら複雑な顔をして俺の前から立ち去りました。
「遥、どこへ」
「シャワーっ!」
遥はそう言うとバタン、と浴室のドアを閉めてしまいました。
…遥は、怒ってしまわれたのでしょうか?
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