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13.紹介
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そして日曜日、雨依の修学旅行中の間だけうちに居候するという人物を雨依が紹介しておくと言い、家に連れてやってきた。
「紹介します。こちら、東高校2年の奏師 始(ソウシ ハジメ)先輩です。」
果たしてどんなのが来るのかと思っていたら、高校の先輩っ…!?雨依が先日、別の者を…なんて言っていたから、てっきり雨依より歳下だと思っていた。
それにしても中学ではなく高校の先輩って、一体何繋がりで知り合ったんだ…?こいつら。
とりあえず、じーとその奏師 始を上から下まで観察するように見つめていると、彼がふとやれやれといったように両手を横に広げて肩を竦めてみせた。……なんだ、こいつは。
「お兄さん、そんなに見つめられると僕も照れます。」
「…はい?」
「今回は雨依から、雨依の留守の間のお兄さんの警護を頼まれここに来た次第であります、奏師 始です。短い間ですが何卒よろしくお願いします」
すっと手を差し出され、俺はキャラの濃いそうな彼に若干戸惑いつつも手を差し出す。
雨依より少し背の低めの茶髪の男…一見普通の高校生のように見えるが、雨依がわざわざ俺が1人は心配だからと言う理由で彼をここに置くということは、彼も何か特別な力を持っている、ということだろうか。
「遥、この人には遥に同居中の間一切手出ししないようにきちんと言いつけてあります。なのでご安心を」
「はあ…」
そもそも、手出し、とは…なんだ。
「それにしてもここで雨依と一緒に暮らしてるなんて、お兄さん一体何者なんですか?」
は?
目の前に立つ彼がずいっと同じくその場に立つ俺に向かって興味津々そうに顔を近づけてくる。
何者…って…。
「加えて雨依が留守の間護って欲しいと言わせるほどの大物だ。もしかして雨依以上の壊れた力をお持ちなんですか…?」
茶髪の長い前髪の束から見える彼の黒目がそう尋ねながらオレンジ色に発光した。
な…っ…ー
「やめてもらえませんか、ソウシ」
すると、台所でお茶をコップに入れていた雨依がふとこちらを振り返り、不機嫌そうに見つめている。
「おっと…これは失礼、雨依を怒らせるつもりはなかったんだ、本当だよ。すまない」
ソウシ…と雨依に呼び捨てで呼ばれた雨依より先輩のはずの彼は、胸に手を当て雨依に軽く頭を下げる。…何なんだこの光景は。
ー
その後、彼が帰ってから雨依が彼とのことについて語ってくれた。
「ソウシとは、数ヶ月前、たまたま学校の行き帰りをしていた時に知り合っただけなんです。彼はその時、複数人の不良に絡まれていたとある学生を助けているところでした。」
…
『うわぁぁっ!お、覚えてろよー…っ!』
『ふん…。ほら、君は早く逃げなさい』
『ありがとうございますっっ…』
「彼はその時所謂特殊な力で彼を助けていました。」
「へえ、おかしな癖の強い奴だと思ってたけど、良いところもあるじゃんアイツ」
それにしても、特殊な力…か。
「それって雨依みたいなやつか?」
「ええそうですね。種類は全く異なりますが」
種類…?
「しかし僕はだからといって彼と親しくなるつもりはなかったんですよ。彼に興味があったわけでもありませんし。ただ、横を通り過ぎようとしたら…」
…
『おいちょっとあんた』
『……何ですか?』
『…!もしかしてお前、…その瞳…あの慈悲なき冷酷殺戮兵器、青い悪魔とも謳われた青の瞳、ローモンド・ブルーか…っ?』
『迫真の演技お疲れ様です。僕の名前は青条雨依、よって人違いですね。さようなら』
『ておい待てっ!!』
『…何ですか』
『……っ!…これは、か、金縛りか…っ?』
『僕に付いてこようとしないでくれますか』
『お前本当に、本当だったんだな…。まさかこんなところで偶然にも会えるなんて…運命だ』
『やめてください迷惑です。』
『待て!待ってくれっ!』
『…何ですか。』
『頼む、俺の…俺の師匠になってくれっっ!』
『はい?』
『俺はあんたほどの生まれ持った純粋な力を持ち合わせてるわけじゃない、今のだって、独学で何とか生み出したものなんだっ』
『…独学で』
『ああ。俺はあんたみたいな人を超越した力を持つ強い奴が昔からの俺の憧れで目標なんだ…っ!だからっ』
『…。憧れ、ですか…』
『…ああ!だからっ、…この通りっっ!』
「…という経緯でソウシは僕の弟子になりました。」
うわぁ世界観が意味わかんねえ。全然ついていけねぇ俺…。
「つーか、ソウシキャラ変わってねえ?一人称俺呼びだったか?」
「ソウシは元々今話したような熱い性格の持ち主です。外面はかなりいいんです、因みに人前では彼は僕呼びです。」
なる…つまり二重人格ね…。
「彼の話はこれくらいです。どうです遥、ソウシとやっていけそうですか?」
「え?」
こちらをじっと雨依が青い瞳を向けながら尋ねてくる。
「遥の為を思って僕が勝手に思いついてやろうとしたことですが、しかし、遥が少しでも彼のことが不快なら、遠慮なく言ってください。もしそうなら、彼には今からでも即僕から断りの連絡をしておきますので。」
「…雨依」
けれど、万一それを断れば、雨依は確実に俺を心配して修学旅行を休む…。なら、選択肢は実質一択しかねえじゃねぇか。
「ふう、仕方ないな。他人と住むのは気を遣うから結構苦手なんだが…俺。でもまあ雨依の俺の為を思ってくれての頼みなんだし、文句言わずに受け入れるよ。」
「…遥」
「だから、お前は何も心配せずに、修学旅行楽しんでおいで。いい思い出たくさん作ってくるんだぞ」
「…はい、遥。」
ぽん、と雨依の頭を触りながら俺は雨依を優しく見つめた。
そして、早くもその時が訪れた。
「行ってきます。遥」
「ああ、行ってらっしゃい。雨依」
スーツケースを引いてこちらを振り返る雨依に俺は笑って手を振り、そして、去っていく雨依の方角からまるで入れ替わりのようにソウシが姿を現し、こちらに向かってやってくるのが見えた。
「これから3日間お世話になります」
ほんのりオレンジ色じみた瞳を俺に向けたソウシは唇の端を小さく上にあげていた。
「…ああ。こちらこそ、よろしく」
雨依が帰ってくるまで、あと、3日…ーー。
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