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「イーリス様、国王陛下がお呼びです。」
「様はやめてください。」
「しかし、王直属の護衛の方ですし、自分と違ってαですから…」
イーリスはそんなことをいうΩにため息をついた。
この国はこのままでは衰退し、滅びてしまう。
イーリスはそう考えていた。
東の国土の砂漠化がさらに進み、水資源がまた減った。
争いを続ければ国土は荒廃し何も残らない。
優生などくそくらえだと、内心王を嫌うこともあった。しかし、イーリスは賢かった。時を見計らっていた。
今はまだ、その時ではない、と。
*
「FRΩだ!!幹部が出たぞ!」
パトロール中、聞こえた声にイーリスは跳んだ。
建物の屋根の上から、街を見渡す。
十軒先、影が軽やかに跳ねる。
「美しい…」
思わずそうつぶやくほど、しなやかな身のこなし。
しかし黙ってみているわけにもいかない。
イーリスは機会を待っていた。
反逆グループFRΩと話す機会を。
「イーリス様!」
「全員待機!手を出したものは承知しないぞ!!」
「しかしヤツは何人も!」
「俺が相手する!殺すな!」
仲間の頭上、屋根の上を走り、跳び、声を飛ばす。
(気づかれた。)
前にいたはずの影は下に。
イーリスも後を追う。
3分走れば、周りに人影はない。
ぐっと距離をつめ、腕をつかんだ。
(止まらないだと?!)
腕を振り払うこともせず、しかし止まることもない。
並みの人間なら引きずられていただろう。
しかし、イーリスの動きと体力は国軍随一だ。相手に速度をあわせ、ピタリとついた。
一瞬。
こちらを見たのは、男。
鋭い眼光。銀色の瞳は黒い前髪の隙間からでも光り、こちらをまっすぐとらえている。
(この男……)
イーリスが思考を飛ばした一瞬、男の腕にぐっと力が入った。
イーリスは即座に手を放し、男は真上に跳んだかと思えば、空中で体をしならせ、イーリスの前に着地した。
腕を掴んだままなら、腕を捻り折られていたか、地面に叩きつけられていた。
「……国軍、何の用だ。」
低い声には警戒と威圧。
握られているのは薬銃だ。
毒薬や、遺伝子組替薬を装填し相手に弾として放つもので、命中率は低いが、当たれば即死。
それを持ち出すということは、腕には相当自信があり、殺意があるということだ。
「俺はイーリス。国王の護衛だ。」
「そうか。死ね。」
「待ってくれ!!あなたと話がしたい!」
おそらくこの男と戦闘になれば負けるのはイーリスだ。
男は一度もイーリスから目をそらしていないが、周りの気配を常に探っている。
どこから攻撃されても、彼は相手できるだろう。
「俺は話したくない。ここからすぐに消えるか、消されるか、選ばせてやる。」
「あなたはなぜ国軍に逆らうのですか?」
「おい、聞こえなかったのか?本気で撃つぞ。」
「このままではこの国は滅びる。そうならないように手を打ちたいのです。あなたは何の目的でこの国に逆らっていますか。」
機会を逃すわけにはいかなかった。
イーリスはおびえることも、逃げることもせず、静かに男に話しかけた。
男はこちらの本心を見定めているようだった。
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