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竜2
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今日ここに来たのも、まさに帝国の儀式とやらが関連している。数か月前、帝国王都からは遠く離れたこの森で、儀式に準ずる何かが行われた、という噂を小耳に挟んだのだ。時間が経っていることもあり、これといった情報が見つかることはないだろうと思ったが、それでも一度見に行く価値はある。
そう考えたは良いが、ロステアールは魔力の残滓を感じ取るような感知能力が極端に低い男だったので、肝心の儀式が行われた場所が判らないまま、森をうろうろしていたのであった。
(しまったなぁ。普段はレクシィが概ねの検討をつけてくれるから楽だったが、さて、どうするか)
なんとなくそんなことを思いはしたが、別段ロステアールは困っていなかった。こういうときは困るものだという認識が彼にそういう考えを起こさせただけで、ありとあらゆる感情が欠如しているこの男が真に困ることなどないのだ。
まあ適当に森を歩いていればいつか見つかるだろう、と思った彼は、別に極端に楽天的なわけではない。幸い森の中には獣が住んでいるし、先ほど川も見つけている。ロステアールが帰らねば国が困るということもないし、やろうと思えば数か月をこの森で過ごすことも可能だった。だからこそ、なんとかなるだろうと思ったのだ。
勿論、本当に数か月かける気はない。既にこの森に入って三日が経過しているし、いい加減何がしかの痕跡くらいは見つけたいというのが本音だった。
そんな時である。不意にぞわりと背筋が凍るような何かを感じ、ロステアールの肌が粟立つ。同時に、木々で休んでいたのであろう鳥たちが一斉に飛び立つ羽音や、獣が悲鳴じみた鳴き声を上げて走る音が聞こえた。
生まれる前から廃棄されているロステアールの感情が表に出ることはなかったが、たった今捨てられたそれは、紛れもなく恐怖であった。ロステアールの驚異的な生存本能を以てしても、僅かな表出を許してしまうほどの、圧倒的な恐怖だった。
(なんだ、この、気配は……)
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