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竜4
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ロステアールは跪いたまま、慎重に言葉を選ぶ。
「精霊の加護ばかりは、いかようにもならない。故に、この剣を以て私の意思とみなして頂けるよう、切にお願い申し上げる」
その言葉に、しかしそれは何処か呆れたような声を返した。
『精霊魔法など。そんなものは俺の前では何にもならん。……もしやお前、自分が何者か判っていないのか?』
「……グランデル国王が第三子、ロステアール・クレウ・グランダ。肩書を申し上げるのならば、グランデル王立騎士団第一部隊の副隊長ということになる。私はこれ以上でもこれ以下でもないと自負しているが」
『俺はもっと本質的な話をしているんだがな』
そう言ったロステアールに、やはりその瞳に呆れたような色を滲ませたそれは、亀裂の向こうから、ぬっとその首を出した。露わになったその姿に、ロステアールが再度目を見開く。
深紅の鱗に覆われた、角の生えた爬虫類のような姿。その全容こそ把握できないものの、ロステアールはこれに良く似たものを、何かの本で見たことがある。
「……貴殿は、ドラゴンか……?」
『見れば判るだろう。ああいや、お前ら人間は、翼持ち鱗あるものを一様にドラゴンと呼称しているのだったか。では答え方を変えるか。俺は、竜種という意味でのドラゴンだ』
確かに、リアンジュナイルに残る伝承では、ドラゴンとはただの翼ある爬虫類ではなく、圧倒的な力を持った種族だと言われている。だが、それがこれほどのものだとは、ロステアールも思っていなかった。
この竜ならば、大陸ひとつを滅ぼすのにも、さしたる労を要しないだろう。
ロステアールは非常に優れた戦士であるが故に、己と目の前の最強種との間に横たわる絶望的なまでの力の差を理解してしまった。そして同時に、この生き物と対峙した時点で己を死が決定づけられているような錯覚に陥った。それほどまでに、ドラゴンという生き物は圧倒的な強者であったのだ。
それでもロステアールが自身を保っていられたのは、生来の感情の欠落に加え、竜から敵意らしきものを一切感じなかったからだろう。
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